怪しい時計、Aliexpressで買ってみた:自動巻き複雑機構のオープンハートで1万以下!?LIGEブランドの腕時計


楽天でも販売されているLIGEブランドの腕時計。自動巻き機械式なのにたったの1万円以下、トリプルデイト(月日曜日表示)、サン&ムーンダイヤル、オープンハートなのに1万円以下。これは怪しいでしょ。



特にこれまで質の悪い詐欺まがいの腕時計(例えば先日レビューしたFNGEENとか)に当たった後だと不安になるのは当然だが・・・意外や意外、今回のものは品質が悪くないようだ。



LIGE



Image courtesy of Aliexpress

先に楽天ショップへのリンクを置いてしまったが、実は私が購入したのはAliexpressでのこと。

Aliexpressの「LIGE Official Store」(LIGEオフィシャルストア)とデカデカと書いてあるショップからの購入。とは言え、Aliexpressではオフィシャルストアと書いてあっても実際にはそうでないところも多いと聞くので、どれだけこの言葉に信憑性があるのかは判らない。だがこのストアでは一応LIGEブランドの時計以外は販売していないし、アドレスは「ligefactorydirect」(LIGEファクトリー・ダイレクト)となっているので製造工場が横流ししているのでなければ本当に公式ショップなのかもしれない。


Image courtesy of Aliexpress

LIGE公式ショップでは今回購入したモデル以外にも様々なモデルが販売されているが、今回レビューしているものはこちらのもの。

一応Aliexpressショップの他にも、ligewatch.comという公式ウェブサイトらしいものも存在し、そこからも腕時計を購入することが可能。でも知らない公式ウェブサイトから購入するよりは、一応知名度もあるし、バイヤープロテクションも存在するAliexpressから買った方がなんとなく安心かと思いAliexpressショップから購入した。


開封



なんと箱入り!


そして箱の中には時計だけで無く、よく読めない(けどLIGEとは書いて無さそうな)刻印付きのメガネ拭きソフトクロス、製品タグ、そしてデイデイトミニダイヤルの針を送る隠れプッシャーを押すための工具も付いてくる(これはラグ側面の穴からスプリングバーを押し出すタイプのストラップとかにも使えて便利だ)。


24ヶ月の製造不良保証カードも付いてくる。


説明書も付いている。このモデルはModel 7というようだ。


Image courtesy of Aliexpress

箱の形こそ製品ページのものと違うが、箱の表面もテクスチャがあるし頑張ってる。


ケース



今回選んだのはローズゴールドカラーのもの。


ケースはシンプルな形。ベゼルに当たる部分は丸っこいカーブを描いており、ドーム型の風防に合う。


ドームはシングルドームか。

購入ページには風防は「Synthetic sapphire crystal」(人工サファイアクリスタル)との記述があったが、この値段で本当にサファイアクリスタル採用だろうか?

というのも、安価でサファイアクリスタル使用を謳う時計の中には、実際にはサファイアクリスタルではないものや、少なくとも強度が低いものを使用する例があるようなのだ。例えばGoods Pressの記事『海外通販サイトにおける自称「サファイアクリスタル風防」の真実と嘘』では「Diamond Selector II」を用い、自称サファイアクリスタルの風防の中にも実際にはそうで無いものがあることを示している。

Diamond Selector IIというモノ自体は海外の時計YouTuberの中にも使用者が見られ、強度測定には一般的な機材なのかもしれない。とは言ってもこの製品自体にも怪しさはつきまとう。ネットで探してみると1000円台から5000円台のモノが存在するほか、同一製品を様々な業者が様々な商品タイトルで販売していのだ。また、以前YouTubeのどこかで、動画内でこの製品が正しく使用されていない(「説明書にはX分当てないとダメと書いてある」というものだったと記憶する)場合があるようで、この点も注意すべきだろう。



(製品の写真を見る限りはどれも同一製品だが、この価格差は一体・・・)

このほかに、RWGフォーラムでは、ツメで風防をはじいたときにミネラルガラスであれば高い音、サファイアクリスタルであれば鈍い音がするというものと、水滴を風防に垂らしたときにミネラルでは張り付く感じがし、不均一なかたまりとなるが、サファイアでは滑り落ちるか丸い水滴状態になるという話も紹介されている。どれもどれだけ信憑性があるのかは・・・こればかりは試してみないと判らない。(付け加えると、Watchuseekフォーラムではダイバーズウォッチなどに用いられる分厚いハードレックスやミネラルガラスでは、はじいたときに鈍い音になると報告されている)


側面、竜頭のある側から見ると、その左右に隠れプッシャー(hidden pusher)があるのがわかる。これはデイデイト(日と曜日)ミニダイヤルの針を送るためのもの。付属品の道具で押すことで日付、曜日を設定できるのだ。まあ道具が無ければ針とかボールペンの先とかでもできるけど。


裏蓋はねじ込み式のエキシビジョンバック。


エキシビジョンバックから垣間見えるムーブメントはコートドジュネーブ(Côtes de Genève)などのギョーシェ装飾が施され・・・


ロゴ入りの金色のオリジナルローターも次第に広がっていくギョーシェにより美しい。


少々残念なのは、斜めから覗くとThomas Earnshawの時計のように白いムーブメントリングが見えるところ。だがこの価格でならこの程度の欠点は不満にならない。


Image courtesy of Aliexpress

防水性能に関しては30mと50mという矛盾する記述が見られた。


文字盤



インデックスはプリント。


Image courtesy of Aliexpress

こちらはほぼ同様のデザインで、アプライドインデックス(少なくともそのように見える)のモデルのよう。これは2019年の新作モデルとしてAliexpressショップに存在するもの。


文字盤は不思議な二段構造になっており20と40のプリント部が半分隠れる不思議ちゃん仕様。


時分針は山折りのドルフィン針(Dauphine)。秒針はない。


文字盤の大部分は卵の殻の表面のような細やかな突起が一面にある仕上げで、スモールダイヤル部はケースと同色の縁取りの中に平坦な部分とレコード状の同心円状刻みという異なる仕上げが使い分けられている。


仕上げの使い分けは、3時方向の日付ダイヤルと9時の曜日ダイヤルはどちらも中心がレコード状で、プリント部が平坦。24時間ダイヤル/サン&ムーン部分は逆に、中心が平坦な仕上げで、プリント部がレコード状となっている(なぜか24時間表示のところだけフォントがサンセリフとなっている。文字盤内の表記はそれ以外は全てセリフフォント)。


サン&ムーン部分は太陽がニコニコしていて可愛い。月には残念ながら(?)顔はない。


売り文句には「Tourbillon」(トゥールビヨン)と声高に書いてあるが、なぜだか中国ではこれは「トゥールビヨン機構」ではなく、時計の心臓部ことテンプの動きが見える「オープンハート」をさして用いられているようだ(実際のトゥールビヨンに関してはERA Prometheusのレビューをご参照あれ)。この事は英語が公用語として用いられる腕時計フォーラムなどでもある程度周知されていることなので誇大広告とはもはや言いがたい面がある。

そんなオープンハート部は、クルー・ド・パリ(clous de paris)仕上げの施されたブリッジに、KIF Parechoc式のショックプロテクション(毎度お世話になっているWatchuseekフォーラムの、da.henkel氏の投稿によれば、その中でもKIF Elastorというもの)。オープンハート下部の目盛りはよくわからない。


スモールダイヤル部では青く透き通ったペイントがなされている。

オープンハートから見える緑がかった青ネジとはまた少し異なる青で、綺麗だ。


ストラップ



ストラップは茶色いレザー製のクロコダイル竹符型押し。バックルは観音開き式プッシュ式のDバックル。



これだけでもAmazonでは1500円くらいするから、それを考えると儲けもんに思える。

同じ茶色いクロコダイル型押しレザーでも、セイコー・アルピニストに付属のものよりもぱっと見の見栄えは良い。

アルピニスト同様に、時計部近くは分厚めになっている。(対して、類似するストラップとしては、クロコダイル型押しレザーにDバックルストラップが付属するSOVRYGN Watchesをレビューしたことがあるが、そちらは時計部付近も薄い。)


バックル部にはLIGEのブランド名が刻印されている。


裏面は「Leather」と「22」という刻印。22はもちろん22mmのストラップ幅を示すものだろう。Leatherは・・・通常は「Genuine Leather」(本革)という刻印が見られるが、Leather(革)だけということは合皮だろうか・・・?ぱっと見も臭いも合皮には思えないというか、Genuine Leatherと書いてあるものと比較しても違いはわからない。


私は16~17cmほどの手首径だが、ストラップ穴の設定は一番小さいもので丁度良い感じ。


まとめ



「安かろう、悪かろう」という普遍的な言い回しはたいていの場合正しい。しかし今回は良い意味でそれが裏切られたように感じる。これを可能にするのは原材料や人件費の安さ、利幅の小ささであるだろうし、逆に私たちが普段何気なく購入している物の中には同じように原材料や人件費を安く作って馬鹿高い利益をむさぼるものも少なくないだろう。

文字盤が階層構造であることを売りにする時計も多くあるのが、その実装方法としては微妙。その一方で各文字盤内要素のバランスやディテールの生み出す光の反射など、全体としてみれば美しい時計である。

中国製だから、中国ブランドだから、と言った偏見を持っていては、こういうコスパの高い面白い腕時計を見つけることができないだろう。


無論、耐久性がどうかはまた別の話であるが。そしてこればかりは時間が経たないと判らない。

一応日本のAmazonでもLIGEブランドは扱っているようだが、何故か現在は自動巻きモデルがどれも売り切れ状態。手に入れたいという方は、日本の店から購入したい場合は冒頭の楽天ショップ、もしくはより安価に購入したいのであれば勇気を出してAliexpressから購入するしかないようだ。


Source: Goods Press, RWG, Watchuseek 1, KIF Parechoc, Watchuseek 2

(abcxyz)

コメント