100万円クラスのトゥールビヨン腕時計を10万円台で!?ERA Prometheus提供レビュー


トゥールビヨン腕時計と言えば1000万円位しそうな高嶺の花といったイメージがある。近年は安価な物も登場してきているが、しっかりとした品質を持ちながらも安価なものとなればやはり数十万から数百万は下らない。

そんななか現れたERA Timepieces社は、100万円クラスのトゥールビヨン腕時計を安価に人々に提供することを目指すアメリカの新興腕時計会社だ。今回は同社よりトゥールビヨン腕時計「Era Prometheus」を提供いただきレビューさせていただく。



トゥールビヨンとは



Image: Public Domain

トゥールビヨンとはもともと懐中時計が一般的であった時代に開発された物。時計の置き方が一定方向であれば、時計内の構造が重力による影響を受けて精度が落ちることを解決するためにフランス人時計師アブラアム=ルイ・ブレゲが1800年頃発明したとされる。

トゥールビヨン機構を持たない懐中時計は、例えば普段ポケット内に縦方向に入れられた状態で下側に向けて重力が働き、脱進機がその影響を受け精度が落ちるが、時計の脱進機が回転するというトゥールビヨン機構を持ったものは脱進機の下に来る部分が常に回転し続けるためにこのような重力の影響を分散するのだ。

そんなトゥールビヨン機能の恩恵を受けることができるのは、当然ながら時計ムーブメントが常に地面に対し垂直方向に位置する時計(例えば懐中時計)であり、この機構を搭載した腕時計にどれだけ精度の面で価値があるのかはなんとも言えない。それでも腕時計にトゥールビヨンが搭載されてきたのは、人類の造り上げた機械式腕時計の技術やその美しさを見せることにあっただろう。中には脱進機が3次元的に回転することで腕時計としても精度の面で意味があるとされるトゥールビヨン機構などもあるが。

しかしそんなトゥールビヨンはその製造の難しさから非常に高価で、腕のある時計職人しか作ることができず、価格も1000万円は下らなかった。しかし近年になるとその製造難度や複雑さを技術の進化が克服したのか、徐々に安価なものが登場し、2000年代末からは中国製の10万円以下のものがようやく登場してきた。それでもまだトゥールビヨン腕時計と言えば大半は数百万円は下らず、非常に高価なイメージは今でもつきまとう。そして、機械時計好きにとってはこの人類の英知が詰まった技術の驚異トゥールビヨン機構は一度は腕にしたいという夢の機構でもある。


ERA Timepieces - Era Prometheus



アメリカのERA Timepieces社が目指すのは100万円クラスのトゥールビヨン腕時計を安価に人々に提供すること。 そんな同社のEra Prometheusはそのコンセプトを名称にも冠している。神々の炎を奪い人類にもたらしたプロメテウス(Prometheus)の名の通り、高額で手の届かないイメージのあるトゥールビヨンを人々が入手しやすい価格で仕上げたのだ。


開封



まずは開封の儀式から。ロゴ入りの外箱を開けると…


中にはロゴ入りの包み紙にくるまれ、更に封蝋(!)がなされたもう一つの箱が。蝋の色はEra Prometheusの各所に用いられている紺色だ。


包まれていたのは艶のある仕上げのなされた豪華な木箱。


留め金はプロメテウスの象徴である松明だ。


箱の中にもロゴが印刷され、豪華さ満点。中央に鎮座するのがEra Prometheusだ。


ケース



シンプルながらもクラシカルでエレガントなケースは手作業で仕上げられた艶のある316Lステンレススチール(なお後述するがプラチナムベゼル版も存在する)。風防は傷に強いサファイアクリスタルに、反射防止コーティングが成されたものだ。


ベゼル径は44mm、厚さは12.72mm。重さは100g。竜頭はコインエッジのオニオン型。


8箇所をネジ留めされた裏面ケース部にはケースや風防の部材やERA社のロゴと共にシリアルナンバーも入っており、限定品であることが示される。なお裏面もサファイアクリスタルとなっており、傷の心配なく内部の美しい構造を覗き見ることができる。5気圧防水となっているのも嬉しいところだ。

使用されているムーブメントはHangzhou Watch CompanyのHZ3360A。手回し式の機械時計で、20石、パワーリザーブは42時間、28,800VPH。もともとこのムーブメントは+/-25秒だが、ERA Timepiecesはこれが一日+/-10秒になるようレギュレーションしたものを使用している。このレギュレーションは喜ばしいことだ。


文字盤



文字盤は優雅なカーブを描いた装飾が施されており、スケルトン構造でムーブメントのギア類が見える。装飾部とムーブメント部の色の多くはシルバーで統一されており、文字盤手前には青地に白でインデックス類が印される。時分針は文字盤中央より僅かに上に位置し、インデックス部分もそれに合わせて傾斜している。



HZ3360Aムーブメントは装飾部の奥に見える部分にも装飾が施されており、それらの隙間を縫ってギアが見えることで立体感が感じられる。しかしその立体感や機械感が一番高まるのは、やはりこの時計の最大の要素であるトゥールビヨン機構部だ。トゥールビヨン機構は6時の位置に収まる。この部分は裏面までシースルーとなっていることで、前から後ろからこの複雑な機構の動きを堪能することができる。


トゥールビヨン機構はまた、1分間に1回転するようになっており、秒針の役割も果たしている。テンプ、アンクル、ヒゲゼンマイ、これらがまるごと回転していく様子にはなんとも形容しがたい魅力があり、目を離すのが難しい。


3時部分には太陽と月が交互に回るサン&ムーン表示機構。午前と午後とで太陽と月とが交互に上に登る。文字盤9時方向に設けられたGMTサブダイヤルにはERA Timepiecesのロゴが白く切り出されている。太陽と月のイメージは金色となっており、GMTサブダイヤルの奥の金色の部材、そして金色のテンプ部と共に、銀と青がメインカラーとなっているこの時計にアクセントを添えている。


GMTサブダイヤルは9時方向にある。これはメインのダイヤルとは別のタイムゾーンを24時間表示することができる機構。別にこの機構を使ってわざわざGMTを示す必要は無く、海外の取引先や旅行時にはこちらを別の国のタイムゾーンに合わせることができるので便利だ。GMTサブダイヤル部分にはERA Timepieces社のロゴも入っている。


時分針はハンドペイントされた光沢ある青いもの。ブレゲ型となっており、針の途中の円形部は蓄光となっている。このバージョン(後述)ではスーパールミノバの中でも最上級のX1が用いられている。来年1月以降に出る最終版では、蓄光素材の中でも最も良いものとされるスーパールミノバX1シリーズの中でも最も明るいC3が使われ、時分針の他に毎時のインデックス部分とGMT部分のERAロゴにもこれが塗装される予定だ。


ストラップ



今回レビューするのは黒いホーンバッククロコダイルレザー状のストラップがついたもの。表面は時計文字盤内の青色要素と共通する青い糸で縫ってある。時計部に近い側にワニの背の起伏を模した突起が見られる。この部分は分厚目になっているため、特に最初に腕に着用する際には曲がりづらく感じるだろうが、次第に慣れてくるはずだ。


実はこれはカーフスキン(子牛の皮)製なのだが、400種類以上のストラップの中から一番鰐皮に見た目も触感も近いものを選んで製品化されたそうだ。鰐皮を模した安価なストラップでは主にワニの腹側の模様を型押ししたものが多いが、こちらは背側の突起ある部分を再現しているだけあり立体的で、安っぽさは感じない。もちろん本物の鰐皮を知っている人からすれば一目瞭然ではあるが。


通常のバックルとストラップループで固定するモデルも存在するが、今回のものは方開き式Dバックルとなっている。


腕に丁度良い位置に方開き式のDバックル部品を取り付ければ、それ以降はバックル両脇のボタンを押し込むことでストラップが開くようになる。Dバックルは時計のつけ外しがワンタッチで済むというだけではなく、ストラップのレザーを無理矢理曲げないので傷めづらい。しかもその上ストラップを外すときにもループ状となったままなので落としづらいという利点がある。個人的にはこの方開き式の方が観音開きより好きだ(観音開き式のDバックルだと毎装着時にストラップの両側を別々にバックルに取り付けなければならず、ワンタッチではなく二手間掛かるのだ)。


裏面は灰色に近い肌色で、同色の糸で縫ってある。表裏で別色の糸というのも豪華だ。ストラップ裏にもERAのロゴが。

製品版ではブラック、ブラウン、ブルー、レッド、グレーのストラップから選択できるほか、将来はゴムラバー版のストラップも登場するとのこと。


製品版との違い


今回レビュー用に提供いただいたバージョンはKickstarterの11月発送モデルであり、後にでることのある製品版とは少々違いもある。

文字盤項目で説明した蓄光素材とその塗装部分の違いや、ストラップの選択肢の他にも、製品版には2年間の国際保証がつく。


保証書は、陽極酸化加工、ジェットブラック仕上げされたスティール製で、中央部にERAのロゴがレーザー切り抜きされたものとなっており美しい。(レビュー用に提供戴いた物には保証書に番号が入っていないことがおわかり戴けるだろう)


Image courtesy of ERA Timepieces

他に今回レビューしたEra PrometheusにはTitan Edition(タイタンエディション)とPrime Edition(プライムエディション)が存在し、これらはベゼルがプラチナムとなっており、2.3カラットのダイヤモンドが78個使用される。タイタンエディションとプライムエディションの違いは、プライムエディションの方が先行して作られ、シリアルナンバーがERA00000001となると言う点だ。


Image courtesy of ERA Timepieces

ストラップの色はクラウドファンディング出資者が選んだチョイスが製品化された。それだけでなく、ERA Timepieces社自身は「青にブラウンはカラーパレット的に合わない」と考えて出す予定がなかったブラウン色のストラップはプロトタイプ版の写真を掲載したところ望む声が大きかったため実現されている。また、タイタンエディションやプライムエディションの材質やダイヤモンドカラットなども当初の予定からより良いものへと改良されている。これらの点は、新たな時計会社であるERA Timepieces社がその創設に協力する顧客により良いものをもたらしたいという意気込みが現れていると言えよう。


その他


実は最初にレビュー用プロトタイプを戴いたときには、内部でカラカラと動く部品が見られた。どうもこれは工場の方が誤って修理用に出すユニットをレビュー用と間違えて送ってしまったということのようで、後日今回レビューしているものが送られてきた。なお、今後は同じような失敗が起きないように製造工程も既に変更済みだという。


まとめ



時計は何よりも時間を知るための道具である。その点だけを時計の魅力と考えれば他に安価で時間を見やすい時計はいくらでもある。だが、人類が生み出した技術の驚異、機械式時計を身につけ、堪能するという点で、トゥールビヨン機構の搭載された時計はその他の時計と比べ代えがたい魅力がある。

Kickstarterページではこの時計に関するネガティブなコメントも見られるが、その多くはムーブメントが中国製であるからという先入観を基にした悪口に過ぎない。トゥールビヨンが繊細なムーブメントであることは忘れてはならないが、中国製だから悪いという論理は何の証明にもならない。明らかであることは、2年間の国際保証が付いているということだ。それだけ質には自信があるのだろう。


元々のムーブメントの装飾の美しさをそのままに見せているだけとは言え、人目を引く輝き、そしてその中に感じられる存在感のある立体感と動きは、機械としての時計を身につける喜びだ。実用品としても一日+/-10秒というのは優れているし、GMT機能も国際的に活躍される方には便利だろう。

これが「100万円クラスの」腕時計だとは言えないかもしれない。だが、高価なイメージが今もつきまとうトゥールビヨン機構を持つ腕時計であるのは事実だし、蝋で封された包みに入った豪華な木箱、表裏で糸の色の変えてある肉厚のクロコダイルスタンプストラップ、国際2年保証を備え、クラウドファンディング価格999ドル、市販予定価格1499ドルという価格は悪くない価格だ。そして何よりも、時を忘れてその回転を延々と眺めていたくなるような、そんな魅力が詰まった時計であることは間違いない。



Source: ERA Timepieces, Kickstarter

(abcxyz)

コメント

Unknown さんの投稿…
クラウドファンディングのサイトから来ました。この時計は自動巻なのでしょうか。
パワーリザーブの表示は無さそうですね。
Yu Ando さんの投稿…
Unknownさんコメントどうもありがとうございます。この時計は手巻き式です。パワーリザーブ表示はありませんが、時計裏からゼンマイを見ることが出来るのでその巻き具合を確認することは可能です。
Unknown さんの投稿…
Yu Andoさん
こちらこそお返事を下さりありがとうございます。参考にさせていただきます。
Unknown さんの投稿…
質問失礼いたします。
どうしてもEra Prometheusが欲しいんですが

どこで購入できるのでしょうか?
散々ネットで調べましたがわからないのです。
Yu Ando さんの投稿…
Unknownさん、コメント戴きどうもありがとうございます。現在のところ公式ウェブサイトでは予約販売(発送は4月中旬のよう)が可能となっているようです:
https://eratimepieces.com/a/offers/f/10512/0/era-english-hc-checkout?utm_source=ERAHK_Frontpage&utm_medium=Organic&utm_campaign=ERAHK-Frontpage-Button

日本語で注文が可能なところは、クラウドファンディングサイトGreen Fundingでのキャンペーンも終了しているため現在無いようではありますが、もしかしたらGreen Fundingでプロジェクト起案者となっている株式会社Vantageに問い合わせると何らかの情報が得られるかもしれません。
https://greenfunding.jp/lab/projects/2591/project_inquiries/faq