第一次世界大戦のトレンチ・ウォッチを現代に…VARIO 1918 Trench プロトタイプレビュー


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今回は、当ブログではすっかりおなじみとなったシンガポールのマイクロブランドVARIOから最新モデル、「1918 Trench」をお借りしてのレビューとなる。

同モデルは先日Kickstarterでキャンペーンが行われ、日本円にして2300万円もの資金を調達したところ。

なおレビュー用の腕時計は製品版とは多少異なる点もある可能性もご了承いただきたい。


もくじ

トレンチ・ウォッチとは?
開封:VARIO製腕時計キャリーケースでやってきた
ケース:レトロで小ぶりで美しい
文字盤:エナメルダイヤルに古風なフォント
ストラップ:魅力のBund strap
まとめ:各要素が上手くまとまった現代のトレンチウォッチ


トレンチ・ウォッチとは?


第一次世界大戦。戦車、飛行機、毒ガスなど、それ以前の戦場存在しなかった数々の革新的な兵器が登場したことでも知られるその戦いで、重要な役割を果たしたのが、実は"新兵器"腕時計だ。

大きな軍隊で「時間」を共有することができることは、緻密で複雑な戦略を実行するのに欠かせない。そこで役に立つのが時計なのだが、それまでは懐中時計が一般的だった。しかし戦場ではグローブをつけた手でわざわざ服から取り出して、懐中時計の蓋を開けて…といった工程を経て初めて時間が確認できるわけで、時間の確認に手間取ってしまうという問題があった。

そこで懐中時計を腕に取り付けられるように改造し、また暗所でも針と文字盤を読み取れるようにした*「トレンチ・ウォッチ」が登場したのだ。
*第一次世界大戦当時は針と文字盤はラジウムにより光らせていた。


開封:VARIO製腕時計キャリーケースでやってきた


VARIO社製の腕時計キャリーケースに入ってやってきたレビュー用のトレンチ・ウォッチ。


ファスナーを開けると、特徴的なストラップの小ぶりな時計がでてきた。


Image courtesy of VARIO

なお製品版ではこのようなミリタリー色のケースとなるようだ。


ケース:レトロで小ぶりで美しい


小ぶりなケースは径が37mm。厚は10mmだが、そこに2mm厚のダブルドーム・サファイアクリスタル製風防が突き出るので実質12mmほど。なお風防は内側に反射防止コーティングが施されている。

ラグ幅は18mmで、ラグから反対側のラグまでは45mm。


横から見ると、風防、ベゼル、ケース部、そして裏蓋が美しく丸っこいカーブを描いている。この形状も懐中時計から発展したトレンチ・ウォッチの特徴だ。

なお、レビューしているモデルは316Lステンレススチール製ケースだが、このほかにもパティナの楽しめるブラス製のモデルも存在する。

ベゼル部分とラグは艶出し仕上げ、ケース側面とケース裏は円周方向にヘアライン仕上げとなっている。

この仕上げの違いにより、ベゼルとケースの描く曲面に連続性を持たせながらも文字盤へと視点を誘うかのような視覚効果が生み出されている。

ねじ込み式の竜頭は4時過ぎあたりに位置。アンティークのトレンチ・ウォッチ写真を探してみると、(一般的な腕時計と同じく)3時位置に竜頭があるものが多いようだ。


この意味では古典的なトレンチ・ウォッチらしからぬ、という見方をされる方もおられるかもしれない。しかしトレンチ・ウォッチとしての実用性の面から言えば、どんなに手首を曲げても竜頭が手の甲に刺さることのない位置に竜頭があるという面でより実用腕時計として優れた設計になっていると言えるだろう。


竜頭は横が膨らむオニオン型だが、頭頂部は平たく、竜頭頭頂にはVarioの「V」字ロゴ刻印がなされている。


そしてこのワイヤーラグ!これもまたトレンチ・ウォッチの特徴である。ケース内部から生え出てケース内部へと入り込む、コの字状のラグ。


ケース裏は、製品版では3種類存在する。こちらは有料アップグレードのサファイアクリスタル製エキシビションバック。


Image courtesy of VARIO

もうひとつは有刺鉄線、兵士、そしてポピーの花が描かれているもの。これは元々は詩人ジョン・マクレーの詩「フランダースの野に/In Flanders Fields」の出だしでポピーが出てくることから定着したもので、ポピーは今でも第一次世界大戦終結を記念するリメンブランス・デーに戦没者追悼の意味で胸に着けられている。

Image courtesy of VARIO

そして追加料金を支払いカスタムエングレービングで好きな文字をレーザー刻印したものだ。


使用されているのはMiyota 82s5。パワーリザーブ42時間、振動数21600 回/時、21石で、Miyota公式スペックによれば精度は-20~+40 秒/日。

これまでにレビューしてきたMiyotaムーブメント搭載腕時計の多くに言えることだが、Miyotaのムーブメントはローターの回転音がSeiko/SIIのものなどと比べ大きめだということは記しておくべきだろう。


ケース裏ステンレススチール部には「11.11.1918」の日付が刻まれている。これは第一次世界大戦で連合国とドイツが休戦協定を結んだ日。なので前述のリメンブランス・デーは毎年11月11日となっている。


シンガポールのブランドなのでSINGAPOREの刻印も。ちなみに、第一次世界大戦ではシンガポールで生まれた/在住であった124名が命を落としている。

なお防水性能は10気圧/100Mとなっている。


文字盤:エナメルダイヤルに古風なフォント


文字盤はエナメルで、独特の艶がある。時分秒針は光を受けると輝くが、どれもガンメタル色であり、可視性を犠牲にすること無く、黒・灰色・白が基調の文字盤に上手く融けこんでいる。

12時下にはVARIOのロゴ。この写真ではエナメルダイヤルに針が反射している(影とは別に)のもお判りだろう。
各時インデックスはプリントだが、プリント部分は膨らんでいる。


時分針はカセドラル針。時針は曲線のある形状。

時分針の軸頭頂が隠れる仕上げであるのも美しい。


分針はアールデコ調のビルディングを彷彿とさせる。


秒針は6時上のスモールダイヤルとして存在する。スモールダイヤルは文字盤から窪んでいる。窪みの縁にもエナメルダイヤルの艶が見えるのがよい。

古風なアラビア数字、そして分刻みのレイルウェイ目盛りもレトロさを感じさせる。


蓄光はC3。可視性十分だ。


Image courtesy of VARIO

文字盤のカラーバリエーションはこちらの通り。かなりバリエーションが多いので一番好きな物を選ぶのが悩ましくなりそうだ。


ストラップ:魅力のBund strap


レビュー用には二つのストラップが含まれていたが、製品版ではこのうちのどちらかを選択(もしくは追加料金で追加)となっている。奥に見えるのは「Bund strap」(色はIndigo Blue)、そして手前は「Single Pass Leather Strap」(色はCoal Black)だ。

まずは特徴的でトレンチ・ウォッチらしい「Bund strap」から紹介していこう。


Bund strapの取り付け/取り外しでは、ストラップのネジ(下面がマイナスネジになっている)を外して行う。


バックルは全体的に丸みを帯び、ストラップの長さ方向にヘアライン仕上げのなされたもの。「VARIO」の刻印がなされている。


レザーはクレイジー・ホース仕様、フルグレイン・レザーに特殊なワックスを使用して仕上げた物だ。レザー繊維の曲がり具合や傷などによって色が薄くなるなどして、ヴィンテージな雰囲気が出るのが特徴。(そういえば少し前にレビューしたVarioの新作ストラップにもクレイジー・ホースのものがあった。)


内側はこのように、ヌバックで僅かに起毛したレザー。Bund strapはケース裏面が肌に触れないようにできるため、腕時計で金属アレルギーを起こすという方にはありがたい。


手首径16~17cmの私が着けるとこうなる。時計部背面のレザーパーツのお陰か、少し余裕を持って着用しても安定性が高く、時計部が手首の反対側まで回りづらい。

また、このレザーパーツのお陰か、はたまたそれに小ぶりなケース径であることも加わってか、金属製のケースが手首に密着するような感覚もなく、着け心地はとても良い。


横から見ると10mmのケース厚に2.5mmのレザー部品の厚みが加わることとなる。風防厚も足せば合計14.5mmとなるが、ドーム状風防であることもあってか特段出っ張った感じはしない。

一般的にBund strapは部品数が多く、手持ちの時計に合せたサイズのものを購入すると巨大になりがちで手首から飛び出してしまいそうになる。しかしこのVario 1918 Trenchは、時計部が小さく、ラグ幅も短めであるため、小さめの手首にも上手く収まる。


もちろんこのようにケース裏に来る部品を取り払って着用することも可能だ。この設定なら腕時計の着脱時にムーブメントも見える。


そうすると、ケース裏がカーブしていることから、ケース厚と風防を合せた12mmよりも格段に薄く感じられる。


Image courtesy of VARIO

Bund strapのカラーバリエーションも豊富に存在する。文字盤の色と合せるも良し、異なる色を組み合わせて楽しむも良し。

こちらは「Single Pass Leather Strap」。シングル・パスなのでワイヤーラグとワイヤーラグの間を通せば付け替えできる。Bund strapは二つのマイナスネジを回さないといけなかったのでしょっちゅうストラップを付け替えたい人はこちらの方がいいかもしれない。


こちらはかなりストラップが余るので腕が大きい人向けといった感じもあるが、冬のコートの上から着用することなどもできるのが強みだろう。


Image courtesy of VARIO


こちらも同じく7色が用意されているのは嬉しい。


まとめ:各要素が上手くまとまった現代のトレンチウォッチ


VARIOの1918 Trench、レトロなトレンチ・ウォッチを現代的に上手く蘇らせたと言えるだろう。

ケース、文字盤、ストラップ、どの要素も全体的に美しくまとめ上げられている。所謂「フィールド・ウォッチ」とは似たコンセプトながらも、歴史を感じさせる、レトロな上品感を足した自動巻き腕時計が欲しい方には大いにお勧めできる。


特にBund strapの着け心地の良さ。そして、全体的に小ぶりであることから、手首の大きさや性別にかかわらず着用しやすいのもこの時計の魅力だ。

文字盤とストラップのカラーバリエーションの多さも嬉しい。


現在1918 TrenchはVARIOウェブサイトの特設ページから予約購入できる。今なら一般販売価格よりも大幅に割引された(8000円ほど安い)特別割引価格で予約できるので気になる方はお見逃し無く。


Source: VARIO

(abcxyz)

コメント

ころ さんの投稿…
はじめまして、こんにちは。
10年以上愛用していた時計を失ってから、ネットで腕時計の探索が日課となっています。そんな中、Ollech & Wajsという初見のブランドが目につきまして、色々と検索していくと貴殿のブログを拝見させていただきました。
VARIOのこの時計、可愛さがありオフの時計として非常に秀逸だなと感じました。NATOストラップで色々とアレンジできるなど、いろんな妄想が膨らみました。手首が細くて厚みも薄い私の腕にも合うのではと思いました。
他の腕時計の記事を読ませていただきましたが、ON用の時計にベイビー・グランドセイコーなるものや、ソビエト製のアンティークもいいなと、これまた妄想が膨らみました。小生、貧乏なのと天邪鬼なのでニッチなものが非常に心に刺さるので記事を非常に楽しく拝見させていただき、世界にはまだまだ知らないブランドがたくさんあるのだなと知見が広がりました。VARIOのトレンチのグレー、ベイビーグランドセイコー、もしくはmarch la.bあたりを交渉してみたいと思います。これからも拝見させていただきますのでよろしくお願いいたします。
Yu Ando さんの投稿…
ころ様、
はじめまして、当ブログをお読み戴き、そして嬉しいコメントを戴き誠にありがとうございます!

長年愛用してきた腕時計を無くすのは、相棒を無くした感じで悲しいですね。

やはり皆が着けている腕時計よりも、ニッチなもののほうが刺さりますよね!

Ollech & Wajs、先日はNavichron Sという新モデルを発表したところで、今後どれだけ日本でも人気が出てくるか楽しみですね。

VARIOのトレンチは個人的にも全体的なデザインの良さも価格も素晴らしいなと思っています。

ベイビー・グランドセイコーは購入時は3万円台だったのですが、あれよあれよと価格が上がり、とうとう5万円台後半になってしまいました。

値段で言うとソビエト製アンティークにかなう物はないですが、保障の面では新品で購入した方が安心感がありますよね。

今後も宜しくお願い致します。