Aliexpressで買ってみた:怪しさ満点ノモス・ラムダのオマージュウォッチby CADISEN


ノモス・グラスヒュッテの「ラムダ」は100~200万円もする腕時計。ところが、中国のCADISENという会社が作るノモスのラムダにとてよく似ている腕時計は、価格が500分の1!

今回はそんな怪しいオマージュウォッチをAliexpressで購入してみた。本家ノモス・ラムダも紹介しつつ、早速どんなオマージュになっているのか見ていこう。



(一応日本のAmazonでも9000円以下の価格で販売されているようだ。)



もくじ


本家本元のノモス・ラムダ
開封開封!
ノモス・ラムダ批判が展開されるCADISENケース部レビュー
元ネタに存在しない機能が付加された文字盤
手こずるミラネーゼ
まとめ:矛盾をはらんだ存在


本家本元のノモス・ラムダ



Image courtesy of NOMOS Glashütte

ノモス・グラスヒュッテのラムダ(NOMOS Glashütte - Lambda)は39mm径と、42mm径が存在し、39mm径は120万、42mm径は250万円ほどする。ケースは18K風防は文字盤面も裏面もサファイアクリスタル製。42mm径のものは文字盤側はドーム状のサファイアクリスタルとなっている。


Image courtesy of NOMOS Glashutte

文字盤は亜鉛メッキ、白銀仕上げ。ムーブメントはノモスのアトリエで製作されているインハウスムーブメントで、DUW 1001という手巻き式のもの。

この美しいムーブメントがエキシビジョンバックから見ることが出来るのも売りの一つであろう。DUW 1001の裏側には、放射線状のコートドジュネーブ様の仕上げや、テンプ受けにも細やかなエングレービングと「Mit Liebe gefertigt in Glashütte」(ノモス日本サイトの訳は「グラスヒュッテより愛を込めて」)が見られる。


Image courtesy of NOMOS Glashutte

ホーウィン社製シェルコードバンのストラップも、そのバックルも時計部と同じく独特の丸みを帯びた美しさを持つ。

39mm径は120万、42mm径は250万円ほどする腕時計で、HODINKEEの2015年の記事によれば当時ノモスで一番高価な腕時計。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

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開封開封!



私はこれをAliexpressの「CADISEN OFFICIAL STORE」で日本円にして5000円ほどで購入したのだが、おまけのレザーストラップが付いてきたようだ。Amazonで購入された場合同様のものが付くかどうかはわからない。

化粧箱の周りは別の厚紙でカバーされている。その厚紙をスライドさせると…


CADISENのロゴがデボスされ、銀色にプリントされた化粧箱。化粧箱カバーにある程度ちゃんとした化粧箱、この価格にしてはしっかりしたパッケージングだ。


内容物は時計と、保証書、説明書ロゴ入りクロス。


保証書には、「この保証書は完全に正しくCADISEN認定ディーラーにより記入され封をなされた場合にのみ有効になる」と書いてあるが、保証書カードにはサインがなされていない。判子みたいな赤い三角の「CERTIFICATE」印は印刷。


ベルトとストラップ付け替えツール、予備のスプリングバー。


ブレスレットが触れあって傷が付かないように、透明なフィルムが貼られていたほか、スチレンフォームも間に挟まれていた。

時計の方はノモス・ラムダの中でもリファレンス番号 933、亜鉛メッキ、白銀仕上げの文字盤に青焼きされた針、18カラットホワイトゴールドの「ラムダ ホワイトゴールド」を基にしたカラーリングのもの。


ノモス・ラムダ批判が展開されるCADISENケース部レビュー



ケース径は42mm、ケース厚は14.5mm(元ネタはケース厚9mm)。


全面ピカピカの鏡面仕上げ。ノモス・ラムダの写真を見る限りはCADISEN版のケースは大まかにはラムダに似ているものの、横から見たときの印象は、厚みがあること、ラグ形状がだいぶ異なることもあり少し違う感じ(ノモスのラグはなだらかな下向きカーブ、CADISENは角張っており下向き傾斜が少ない)。


面白いことにラグは形状こそ異なるものの、本家と同じくベゼル部分までせり上がった作りとなっている。ラグが角張り分厚いのはケース厚が分厚いためかと思うが、どうせベゼルまでせり上がるとこまで真似るならラグ形状ももっと工夫すれば良かったのにと思ってしまう。


ベゼルから風防にかけてのカーブと、ドーム型風防(強化ミネラルガラス)の傾斜の合わせ具合や、ケース側面の傾斜、裏蓋の傾斜は美しい。


裏面はエキシビジョンバックとなっており、内部のムーブメントが見える。手巻き、ハッキング機能あり。パワーリザーブは84時間の本家の半分、42時間。


ローターには彫刻が施されているが・・・この彫刻はシンプル、ミニマリスティックな全体のスタイルと合わない。やはりこの点でオマージュの限界も見えてくるか・・・と安易に考えることもできるだろう。だが対して「本物」のノモス・ラムダはどうか?ノモスファンからはブーイングも飛ぶかもしれないし、CADISENの時計のレビューから離れてしまうが、この点はノモスも統一的な美しさに欠いていると私は感じる。

DUW 1001の裏側に見られるテンプ受けの細やかなエングレービングと「Mit Liebe gefertigt in Glashütte」のフォントは腕時計部との統一感は無いと断言できるし、この点は放射線状のコートドジュネーブに関しても言える。



ノモスが何によって知られているかと言えば、その簡潔で機能的なドイツ工作連盟(Deutscher Werkbund)の精神に基づくデザインだ(ノモス・ジャパンによればドイツ工作連盟のメンバーだそうだ)。この動画でノモスの国際販売部長が語るのは、そのドイツ工作連盟の精神。「技術により製品をより良く、製造をより効率的にする。なぜなら高品質かつ現代的なデザインで手頃な価格の製品を作り、一部ではなく多くの人に提供するというのが挑戦であり目標だから」と語っている。

その精神に基づく統一性が製品に現れているからこそ存在意義があるブランドであるはずだ。この伝統に則った自社ムーブメントであれば、仕上げも必要最低限かつ、無駄に自己主張をしないもの(例えば鏡面仕上げや艶消しなどは無意味に意匠的要素を生み出さないはずだ)にすべきだし、手書き調のエングレービングは他の部分で用いられている飾り気の無いサンセリフ・フォントの統一性を崩し、そぐわない。伝統的な仕上げで自社技術を誇張したい、とかグラスヒュッテの伝統とか言い切るのであれば、それはノモスのデザインの統一性として失敗していると言えるだろう。

結局中に入っているムーブメントに装飾的なもの=ノモスらしからぬものが用いられているのであれば、ノモスの自社ムーブメントでなくてもいいんじゃないか、他社ムーブメントをぶち込めば良いんじゃ無いかと思うし、メッセージをムーブメントに秘めさせたいのであればエキシビジョンバックであるべきではない。そして「手頃な価格の製品を作り、一部ではなく多くの人に」という肝心の目標は大きくないがしろにされている。

ノモス・ラムダの批判になってしまったが、まあ元ネタもそんなものだからムーブメント装飾に関してはCADISENのものも同様に批判する事ができるかもしれない。


クラウンの形も似せてある。側面はコインエッジで、頭頂にはCADISENのロゴが浮き彫りになっている。


元ネタに存在しない機能が付加された文字盤



文字盤の要素に関しては流石にノモス・ラムダには適わない。ノモス・ラムダもブランド名の間延びしたMのあるフォントを除けば他の文字盤フォントには統一感がある。


一方のCADISENのものは時計にそぐわないブランドロゴに、セリフ調のブランドフォント、サンセリフの「AUTOMATIC」表記が用いられている。パワーリザーブと日付ディスクの数字フォントも異なる。


面白い点としては、オマージュ元のラムダに存在しない日付表示機構がついていると言うこと。


この日付表示部に関しては時計全体のデザインともある程度調和が取れていると感じる。表示窓は丸い切り抜きとなっており、使用されているフォントもカーブの丸みが全体に合っていると感じる。


文字盤いっぱいに伸びる分針とパワーリザーブ針はネタ元を上手く再現しているとも言えるかもしれない。


各時に配された短い線インデックスと、分刻みのドットインデックスも良く似せてある。


手こずるミラネーゼ



元から付いているのはミラネーゼタイプのメタルブレスレット。


バックル部は二つ折れ式(?ヒンジ部は2箇所。ヒンジ部が3箇所のバックルは「三つ折れ」と呼ばれるからこの呼び方で正しいかと)。私はミラネーゼにこのタイプのバックルのものは使ったことが無かったので新鮮に感じた。


でもサイズ調整のためにバックル部を動かすときに一部メッシュが詰まって(?)バンド幅が太くなった部分ができてしまい、調整に難航。30分ぐらいかけて捻ったり引っ張ったりしながらようやく望みの位置にバックルを通すことができた。しかし、これがミラネーゼの加工の質の問題か、はたまたメッシュ状に編み込まれており捻ることも可能なミラネーゼの特性に起因するものかは判らない。


16~17cmの手首径の私の場合、バンド幅は最小設定で丁度良い。


おまけのレザーストラップに替えたらこんな感じ。


まとめ:矛盾をはらんだ存在



細かく元ネタに似せていながらも、文字盤の美しさをロゴや異なるフォントの仕様で崩しているあたりはオマージュウォッチたるところだろう。

また、意図してではなく価格/技術的な問題からであろうが、本家の薄さとそれが造り出す時計部全体のバランスの美しさは再現できていない。

とは言え時計としてきちんと動く。安価な自動巻き時計の多くが「ラグジュアリーっぽさ」(例えば先日のLIGEのものとか)を出そうとし、多くの安価なオマージュウォッチが人気のあるダイバーズウォッチやパイロットウォッチを元ネタにする中で、シンプルでミニマリスティックなノモス・ラムダをオマージュしたというのは興味深い。


そして安価な自動巻き腕時計でパワーリザーブが付いているものはそもそも少ないことから(私がこれを購入したそもそもの理由はこれがオマージュウォッチだからではなく、パワーリザーブが付いているからという点にあった)、これはシンプルな文字盤とパワーリザーブを持つ安価な自動巻きとして独特の存在であるとも言えるかもしれない。元々のラムダに存在しない日付表示部やミラネーゼブレスレットでオリジナリティーをアピールしているところは好感が持てる。

なによりも、所詮オマージュウォッチに過ぎないとは言え、ドイツ工作連盟の精神の「手頃な価格の製品で、一部の人だけではなく多くの人に」という部分ではノモス・ラムダを超越する存在であるという、矛盾をはらんだ存在であるのも面白いところだ。



Source: ノモス, HODINKEE

(abcxyz)

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