デザイン美とエルゴノミクスが造り上げた六角形。スイス・メイドのセクシーな腕時計Dietrich TC-1


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特徴的な形状が一目で見るものの目を釘付けにする…そんなDietrichの「TC-1」コレクションより、ステンレススチール製ケースにスペースグレイの文字盤がセクシーな「SS - Space Gray」をレビューしよう。

デザインの統一性に細かく気を配り生まれた美と、高いエルゴノミクス性が巧みに纏まった美しい腕時計だ。



Dietrich


1969年「フランスの時計作りの聖地」である仏東部ブザンソンに生を受け、パリにデザインを学んだエマニュエル・ディートリッヒ氏(Emmanuel Dietrich)。彼が2010年スイスのツークで設立したのがDietrichだ。

「我々のパーソナリティーについて多くを語り、このアクセサリーにより自分が高められる」、そんな人生のコンパニオンとなる腕時計作りを目標とするディートリッヒ氏は、腕時計にはつけ心地の良さ、エルゴノミクス性が無ければならないとも語っている。Dietrich公式ウェブサイトの言葉を借りれば「仕立てられたジャケットのように、それを感じると同時に忘れるものであるべき。その重み、密度、存在感を感じながら、その接点を忘れて、不快感を感じることの無いもの」こそが理想の時計なのだ。

その理想の追求の先に生まれた形だろうか、Dietrichの腕時計は有機的な形と共に独特の六角形のケース形状もブランドの特徴としている。



開封



Dietrichの包み紙にくるまれてやってきた「TC-1 SS - Space Gray」。


TC-1はキャリングケースに入っている。キャリングケースも上から見ると六角形であり、側面の刺繍にも六角形が象られている。個人的には大きな木箱などでは無くキャリングケースに入っているというのは嬉しいところだ。


保証・証明書はA5サイズの厚紙に、まるで紙幣のような複雑な模様と、購入モデル、販売者や日付が記されている。もちろんこの模様の中にも六角形が。


キャリングケースの中に保護膜に厳重に包まれて入っているのがTC-1だ。早速ケースから見ていこう。


ケース



この写真で既に時計の各要素は六角形をしていることがお判りになるだろうが、細かいところまでこのデザインの統一性が徹底されており、それがこの時計の美しさの一部となっている。

正六角形のケース横幅は、六角の角から対角までが43.8mm。竜頭からケース端までは46.2mm。しかし辺から対辺までは42mmなこともあってか、円形ケースで径が44mmの腕時計と比較すると小ぶりな印象。私の手首周りは16~17cmほどだが、腕につけた状態でも大きな印象はなく、竜頭が食い込むこともほとんどない(これはケース径よりもストラップの端から竜頭の先までの距離が関係する要素だろう)。

六角形のケースと聞くと、「もしかしたら角にぶつかって痛い思いをしたり、いろいろなものに引っかかったりするのではないか」と心配する人もいるかもしれない。だが緩やかな丸みを帯びた正六角形のケース/ベゼル角はきれいに面取がされており、角に当たっても痛くないし、引っかかりやすくもない。強いて言うならケースの上半分であるベゼルを留めるネジ部分。これも外周はナベ状になっているため引っかからないのだが、その溝部分は面取りされていないため、細い繊維などが引っかかる可能性がある。とはいえ、繊細な繊維を取り扱う仕事でもしていない限り日常使用に気になるほどではないだろう。


ベゼルそのものは表面と側面がヘアライン仕上げがなされており、面取りされた角の傾斜部分は鏡面仕上げ。ケースを横から見ると、ベゼル部がケース上半分を占めており、ケースの下部側面は鏡面仕上げの別部材となっているのがわかる。ケース下部はそのままラグとなっており、ベゼル上下の辺を境に下方に傾斜。時計盤面側から見ると、ケース下部の部材/ラグはベゼル表面と同じくヘアライン仕上げがなされていることが解る。


風防はサファイアクリスタル製で、ケースから0.5mmほど突き出す。そしてこれもまたケースと同じ6角形をしており、突出部分は内向きに傾斜している。Pedralの際にも説明したが、近年サファイアクリスタル製の風防がメジャーになってきたとは言え、材質の硬度の高さから加工はミネラルグラスやプラスチックと比べ高価であり、これを独自の形状に加工するのはなおさら高価だ。風防には両面にARコーティングが施されている。


竜頭はねじ込み式で、当然ながら六角形。ケースからまっすぐ突き出ているため六角ボルトのような風貌。各辺は面取りされており、頭頂は六角形に突き出した中にロゴが記されている。


ケースは316Lステンレススチール製で、厚は9.3mm。メタルストラップを含めた重さは166gと、適度な重みがある。この腕時計の心臓となるのはETAのワークホースムーブメント、「2824-2」。信頼性が高いことで知られる、28,800vph、25石、38時間パワーリザーブのムーブメントだ。


裏蓋はネジ止め式で、こちらも当然ながら六角形の蓋。中央にはロゴ、その周りには社名、防水性能5ATM、ケース材質、そして「SWISS MADE」の文字。


文字盤



時分秒針に日付窓。日付窓周囲の窪みは六角状。針はどれも独自のもので、ここにも六角形要素がある。時分針は根元と先が六角形をしており、針方向に僅かな山折り傾斜がある。文字盤のインデックス下部分には縦方向にヘアライン仕上げがなされている。


秒針も遠目にみれば丸にしか見えないかもしれないが、蓄光部分はよく見れば六角形をしている。


針とインデックスは鏡面仕上げの金めっき。インデックスは金の縁取りがなされた底面が長細い六角柱となっている。なおブランド名「DIETRICH」は12時位置から中心に向かいせり出し、モデル名「TC-1」とスイス製の表記「SWISS MADE」は6時位置から中心へと突き出すようにせり出しており、11,12,1,5,6,7時のインデックス部分はそのせり出した要素により六角柱が削り取られたような四角柱となっている。


針は黄緑、インデックスは水色に近い色のスーパールミノバが使用されているが、どちらも光の当たる中では同じ白色に見えるのも面白い。蓄光性能は高く、かなり明るい輝きを見せる。特に室内外共に暗い冬のフィンランドにおいては蓄光性能を見るためにわざわざ懐中電灯で光を当てた直後に暗い室内に入らなければ蓄光を見られないような時計もあるが、TC-1ではただ窓辺で(といっても直接日が時計にあたらず日陰の中で)本体の写真を撮影し、それから暗所に行って蓄光の写真を撮っただけでこれだけ明るく蓄光が見られた。他にも同様にスーパールミノバを蓄光材として使用する腕時計をレビューしてきたが、ここまで明るく光っているのもしかしたら塗料が塗られている面積が他のものよりも大きいからかもしれない。


真っ暗な中でなくとも、多少薄暗いところに行ってもご覧の通りかなり輝いているのが分かるだろう。


文字盤は立体的な作りになっており、インデックスよりも内側の中央部分は六角形に窪み、小さな低めの六角錐がハニカム状に配されている。この六角錐達ひとつひとつが六方向からの光を各面に受け、特徴的な反射テクスチャを生んでいる。

文字盤外周には溝のようにして秒目盛りが存在するが、面白いのは秒目盛りが12時と6時のせり出しを迂回する形となっていること。迂回部分にもちゃんと秒目盛りは存在する。このせり出しが無ければ文字盤内は完璧な六角形要素にする事が出来るのに、なぜせり出し部分があるのかとはじめは思っていたが、実はこのせり出しは文字盤内だけで無く時計全体で見たときの統一感を生むための要素。ストラップと文字盤との形状的な接点なのだ。


これを頭に置きストラップ中央の六角形のコマと文字盤を見てみると、この「せり出し」がストラップのコマの生み出すリズムの延長となり文字盤要素の中に融合していることが解るだろう。


ストラップ



ステンレススチール製3連ストラップはこれもまた六角形により構成されており美しいまるで亀の甲羅や爬虫類の鱗、蜂の巣のような印象を与える。始めこのメタルストラップを見たときはそのゴツい形相からつけ心地が悪いのでは無いかと疑ったが、良い意味で大きく裏切られた。つけ心地が非常に良いのだ。

メタルストラップの中にはコマがかなり内側にも外側にも柔軟に動くものがあるが、TC-1では外向きには動かず、内向きへの曲がり角度も限られている。これはそれぞれのコマの外側と違い内側のみが面取りされているため。なので各辺がぶつかり合う外側には曲がらず、面取りされたコマの内側のカーブに沿って曲がるようになっている。内側への傾斜は、中央の六角形のコマと、その両脇の五角形のコマがぶつかり合う接点で止まるようになっている。そのためこのレビュー内の写真でも見られるようにバックルを閉じた際に形を保持でき、バックル部分を底にして自立させることも可能だ。


この状態では時計ケース裏面が平らで、それ以外の面が曲線を描き、バックルのある面はより緩やかな曲線であることがお判りだろう。そしてこれは人の手首の輪郭の形に近い形状でもある。


そして外面と内面でテクスチャーが異なるもの特徴である。外面はヘアライン仕上げで、触った感じをオノマトペで表せば「サラサラ」といった感じ。


内面(と側面)は鏡面仕上げで、どこかしら肌に吸い付くような触感を持つ。

これらの要素ため、ストラップは装着時に手首の形状に沿う形を保つのだ。このため、メタルストラップでよくあるような「ジャラジャラ」とコマを鳴らしながら手首を回転させて腕時計の位置を調整したりする必要は無い。レザー製のストラップであってもラグとの接点の自由度の高さに起因して装着中に微妙に回転してしまうものがあるが、TC-1ではコマ数を上手く合わせればそのような回転すらもない。


メタルストラップの中には毛が引っ張られるものもあり、私は結構難儀するのだが、この六角ストラップでは毛が引っ張られることはこれまで一度も無い。これもストラップの形状とコマ内側の面取りのおかげだろう。

私の手首のサイズでは元々ついていたストラップより5コマ減らした状態でピッタリ合う(それでも大きい人はここからあと3コマ減らすことができる)。確かに手首サイズにピッタリの状態で汗をかくと、ケースバックとバックル裏が蒸れるが、少なくとも私には着用中に外したくなるほど気になることは無かった。それでも夏になるとどうか解らないが。


バックルはバタフライ式となっているが、バックルのボタンが上からは見えない作りになっているほか、結合部分もその他の要素と共通する形状からできているため、全体的なバックルの流れを壊さずに美しい形で閉じることができる。この美しさは感動的。


そして何よりもつけ心地が良い。


まとめ



六角形という形は自然の中にも見られる美しい形だ。そんな六角形を象った腕時計はTC-1の他にももちろん存在する。しかしそのほとんどはその形要素の追求をケースだけに留めているため、特徴的なケース形状の奇抜性のみが目立ち、ただのキワモノに終ってしまっているものがほとんどだ。必然性の上にその形が生まれる蜂の巣やグラフェン、雪の結晶など、自然の中に見られる六角形と、その形を象った腕時計を比べるのはお門違いかもしれない。

それでも、TC-1は表面的に形をなぞった多くの六角時計とは違う。Dietrich TC-1はケースのみならず、風防、針、文字盤、インデックス、ストラップまでも六角形。ここまで六角形要素を入れ込んだ腕時計はそうないだろう。そしてただ多角形を用いるだけで無く、各要素はお互いの形状要素と統一感を持って共鳴しており、美しさを生んでいる。ストラップのコマは六角形であることで形を保持できる機能性を生んでいるし、つけ心地の意味でもデザインの完成度は高い。(SlavaやRevueやRevue Thommenなどは風防や文字盤も含めて六角形のものを作ってはいるが、ここまでの統一感は持っていないし、エルゴノミクス性もこれほどのものではないだろう。)


この点においてTC-1は、ただ六角形の形状を持った他の腕時計を超越し、「六角形であること」への疑問を抱かせないような完成されたデザインを持つ。加えて、それ以外の形をした腕時計に対して、その形状の必然性に疑問を投げかける存在とも言える。

またほぼ全ての要素に独特の形状を用いること(既存の部品を使用していないこと)は、腕時計のユニークさの証であると共に高級感を与える要因ともなっている。価格は2550スイスフラン(記事執筆時の通貨レートで約28万円)。

ある意味Dietrichコレクションの中でのTC-1の立ち位置は、より有機性、芸術性の高いOTコレクションやPerceptionと異なると言えるだろう。TC-1はブランドの独自性、有機性、特徴的な形状を表現しつつも、典型的な腕時計の枠からはみ出しすぎない腕時計と言うことができるかもしれない。堅苦しいビジネスにも、自由を謳歌するプレジャーにも使用できる汎用性の高さを持ちながらも、他に類を見ない独特の美観を併せ持つ一本である。

Dietrichのエマニュエル・ディートリッヒ氏から日本の皆様へコメントも戴いているのでご紹介しよう。

日本とスイスには多くの共通点があります。品質と精度の探求、美しい自然、伝統と現代性。この二国は時を測る機械に対し同じ情熱を抱いていると共に、共にこの分野で最も優れた知識と職人技を持つ国々でもあります。

私個人としても両国を愛すると共に、若いときからその歴史と美観に魅入られてきました。私のルーツはヨーロッパとスイスではありますが、日本は常に私をインスパイアしてき、そしてこれから先も常にそうあるでしょう。

私の最大の夢は、遠く離れながらもとても近いこの二国の満足した顧客達の腕元に自分の作品を見ることであります。


なお私の妻によればこのTC-1は男性向けの腕時計として「これまであなたがレビューしてきた中でトップセクシー」だということも最後に付け加えておこう。


Source: Dietrich, 大沢商会

(abcxyz)

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