「セイコー品質」に問題?埃の混入したプレサージュについてセイコーに確認してみた


実はセイコー・プレサージュのオールドファッションド・パワーリザーブ(SARY136)を8月に購入したのだが、色々と問題があった。最初に手元に届いた品は、文字盤には埃や糸くずが見えるし、ムーブメントも汚れていた。

これに私は驚いた。なぜなら、これまで所有してきたセイコーの腕時計にはどれひとつとしてここまでの酷いゴミや汚れはなかったからだ。海外製で8000円のセイコー・ファイブSNK623には確かに軽度の汚れが見られたが、購入したプレサージュは定価がその11倍の8万8000円のモデルにもかかわらず汚れは多かったからだ。

実はセイコーの品質が落ちたという話は、近年海外のセイコーファンから時折耳にすることだった。それでも気にせずに今までセイコーの時計を買い続けてきた理由は、「それはきっとセイコーの厳しい品質管理の目をかいくぐって、運悪く世に出てしまった希な一本を手にしてしまった人が言っているだけであって、そうそうそのような腕時計に当たることはないだろう」と考えていたからだ。

なので届いたプレサージュの(その最大の特徴であり売りであるはずの)文字盤に一通り絶望した後に、私が感じたのは希望だった。「運が悪かっただけだろう。ここまで汚れているのだから交換/返品できるはずだ。」

しかし…


もくじ

最初に届いたプレサージュ
交換品…2度目の絶望
製造の問題?販売店の問題?募る懐疑心
セイコーの回答:疑問の残る外観判定
「セイコー品質」に問題あり。購入する際は返品・交換可能であることを確かめよう


最初に届いたプレサージュ


最初に届いたプレサージュはこちら。ぱっと見は美しいことこの上ない。

しかしよく見てみると…


1.12時下のSEIKOロゴ、「K」と「O」の間の下部に埃


2.3時インデックス付近(2:45分あたり)に埃


3.スモールダイヤル内部に3つの目視できる埃、その他微細な埃、(5,6時インデックスにも細かな埃粒子が付いている)


4.スモールダイヤル内側側面の塗装残り


5.8時インデックス上右辺、分針上右辺、9時インデックス付近(8時45分あたり)の埃


6.ローターが全体的に綺麗ではない/小さな傷が多数ある


7.マジックレバーの伝え車に埃


更には付属の取説が(4Rではなく)6Rムーブメントのものであったことも驚きだった。

これまで新品のSKX009、SARB017、SARB035、SNK623、中古のAGS、SKXN79、アドヴァン、と所有してきたが、文字盤にこれほど埃があるものは初めて。シースルーバックでもムーブメントがここまで汚れがあるものは初めて。大きなショックだった。

購入店であるイギリスのセイコーの正規販売店Francis & Gayeに連絡すると快く交換に応じてくれた。


交換品…2度目の絶望

しかし交換品もまた問題があった。今度は文字盤の埃は格段に少なかったがムーブメントの方はより悪い状態で:


1.ムーブメント受け部に擦れ跡


2.ネジ頭にも擦れ(*後にこれは傷ではないと判明する)、その下にも埃


3.角穴車には明確な傷跡が3つ(*後にこれは傷ではないと判明する)


4.ローター上の小傷・擦れ具合


5.文字盤スモールダイヤル内側側面の塗装残り

などの問題があった。 さらに:


6.セイコーロゴ周りにやはり細かな埃が付着している


7.文字盤9時付近にも二つの埃

も問題に感じた。


製造の問題?販売店の問題?募る懐疑心

この時点でフィンランドの有名なセイコーファンに品質の問題を相談すると、「ネットコミュニティーに尋ねてみたら良い」との助言を戴いたので世界各地のセイコーファンやプレサージュ・ファンクラブでも尋ねてみた。

すると「文字盤上の埃はグランドセイコーでも希にあるので別としても、異なる取説が入っていたのは怪しい」、「ムーブメントにこんなに傷があるのは流石に見たことが無い」、「誰かが開けて弄った形跡では」、「品質チェックで落とされたB級のグレイマーケット品を掴まされたのでは」などの答えが得られた。

これに関して販売店に問い合わせたところ、もちろん販売店側が販売する時計を開けることなどなく、製品は全て直接セイコーから送られてきたものだとの回答。

Francis & Gayeのアシスタント・マネージャーはセイコーのオンラインコミュニティーでも積極的に活動しているので、故意に売り物の時計を開けるなんてことをするのは考えづらいのだが、この時点では私は少し販売店を疑っていた。

なのでセイコーにも直接問い合わせてみることにした。 

セイコーからは現品を確認したいとの返事が得られたので、早速プレサージュを郵送した。

セイコーが確認するのを待つ間にも色々調べたり尋ね回ったりしていた。すると、このモデルに限ってもどれも同じく品質が悪いのでないか?という考えに辿り着いた。

同時期に同じモデルを購入したフィンランドのセイコーファンがシェアする画像を見ても(画像は載せないが):

1.日付サブダイヤルの3と17の下に埃が見える
2.ムーブメントのネジには擦れ跡(*後にこれは傷ではないと判明する)
3.ローターも美しくない状態

という問題が確認できた。更には日本で販売されている同モデルの商品写真にも同様に:

1.12時インデックスの角の汚れ
2.日付サブダイヤル内部の汚れ
3.ムーブメントのネジの擦れ跡(*後にこれは傷ではないと判明する)
4.ローターの傷

などが見て取れるものがあった。


image: Seiko
極めつけはセイコー公式サイトのムーブメント写真。公式の製品写真にもかかわらず、細かい傷が多いのがよく見える。

かなり本気でコレクションしているドイツのセイコーコレクターの知り合いに、セイコーの品質管理について尋ねたところ、こう語ってくれた:
近年のセイコーは品質管理が良くなく、漆ダイヤルモデルの文字盤に埃が入っていたこともあったし、グランドセイコーでも最近のものは文字盤や針に問題があるものがあり、購入するのは博打のようなものだ(なので現在はヴィンテージのグランドセイコーしか購入しない)。

「最近のセイコーは品質管理が劣化した」という話はたまに聞いていたし、どうやら他のプレサージュ・カクテルタイムモデルの文字盤に埃や毛が入っていたという報告が複数あるのも判明した。


中には「確かに安いセイコーモデルの品質は悪い」と語るファンもいたが、同時に先のドイツのコレクターのグランドセイコーの話など、最高級モデルでも品質管理が行き届いていないという話もあった。

例えば「グランドセイコーの日付ディスクプリントがオフセンターだったり、針に傷があったり、文字盤の塗装の下にゴミがあったり」などと個人的に話をしてくれる人も居れば、Watchuseekでちらっと検索するだけでもグランドセイコーの「針とインデックスが揃わない」、「インデックスが汚い」、「秒針が揃わない>セイコーに直してもらったら汚れて戻ってきた」というような話に事欠かないことからすれば、価格によらずセイコー/グランドセイコーひっくるめての品質管理問題なのかもしれない。

そんなこともあって、この時点で「やはり販売店には落ち度がなく、非があるとすればセイコーなのでは」と考えるようになった。


セイコーの回答:疑問の残る外観判定

セイコーにプレサージュの交換品を送ったところ、以下の回答を得ることができた。なお海外からの問い合わせにはCS推進部という部署が担当。担当の方は私の質問に丁寧に回答してくれた:

1.文字盤は外観判定上不適合は確認できず、現状としては良品判定

2.てんぷ受に小傷が確認できたが、外観判定上良品判定としている範囲のもの

3.ネジ頭上の擦れに見えるのは実際には、鍛造製造過程で圧縮された金属表面に微細な皺のようなへこみが生じたもの

4.角穴車の跡はマジックレバーについた油が軌跡として残ったものであり、外観判定上も良品とは判定できない範囲のもの

5.ローター上の小傷・擦れ具合も良品判定

6.文字盤スモールダイヤル内側側面の塗装残りも良品判定

なおこの「外観判定」の基準に関しては、製造、品質管理上の社外秘とのことだった。

興味深い点として、ネジのへこみに関しては、同ムーブメントに使用されるネジはどれも同様の見た目となっている、と伝えられた点。ちらっと検索してみた限りは、これはプレサージュ・(カクテルタイム・)パワーリザーブに使用される4R57だけを指すのではなく、パワーリザーブ表示なしのものに使用されている4R35も含まれるよう。


image: Hodinkee

例えば上画像のHodinkeeのレビューする日本未発売のSRPB43にも同様のへこみが見られる。私の所有するエキシビションバックの他のセイコーモデルではこのような美しくないネジは使われていないのだが…果たしてこの製造過程に生じるへこみはコスト削減による物なのか、それとも品質基準の低下によるものなのだろうか。


角穴車に関しては、注油量が多かったため、マジックレバーが油まみれになった状態で角穴車が巻き上げられたためにあのような跡がついたのだが、該当部分が出荷検査時に隠れていたか、時間経過と共にこういう状態になったかのどちらかだろうとのこと。なるほどこうして拡大すると確かに傷ではなくオイルのようだ。

傷だと思って疑って申し訳ない…。と思うのだがセイコーによればこの点は、外観判定上も良品とは判定できない、外観判定不合格とのこと。現時点では機能上問題無いものの、油が付着する範囲が広いため、時間が経てば乾燥し、剥がれてゴミとなる可能性が排除できないため、できれば油跡を除去してから返却したいとのことだったのでそのようにお願いした。 

また、念のため最初に購入して交換したプレサージュに関しても写真を見せて外観判定をお願いしたところ、現品での判定ではないので明確には言えないものの、写真のみでの判断としては良品判定の範囲内とされた。

一方で、最初のプレサージュに異なるムーブメントの説明書が付いてきたことに関しては、この製品は取説を箱内に組み込んで出荷するものであり、セイコー側が出荷時に何らかの手違いで間違った説明書が入れられたと考えられるとのことだった。 

結局油部分を除去するのにセイコーの別の施設に送って処置してもらい、それから返却してもらったので、8月27日フィンランド発送、9月4日セイコーCS推進部到着、メールのやりとりを経て9月11日に油除去してもらうことに合意(1週間くらい掛かるとのことだった)、9月18日日本より発送、9月22日フィンランド着。


「セイコー品質」に問題あり。購入する際は返品・交換可能であることを確かめよう

長々と書いてきたが、つまり私が一番問題視する埃混入も、ムーブメント/ローターの小傷も、ネジ頭のへこみも、セイコー側の責任であることが判明したわけだ。

そしてこれら問題は一つの腕時計に偶然生じているものではなく、実際に複数のSARY136モデルで確認できるものであり、セイコーの回答からすればそれらは「良品判定」されて世に送り出されたものだ。 そして先に述べたとおり、SARY136以外のプレサージュ・カクテルタイムでも同様の問題が散見される(最新のアラビア数字のカクテルタイムモデルはどうか知らないが)。

ただ、この問題の原因が何であるのかはわからない。

・果たしてこれは「外観判定」の基準が前より下がったためか?
(プレサージュ・カクテルタイム、もしくはSARY136に限って外観判定基準が他より緩い可能性もゼロではないが、セイコー全体の外観判定基準が下がった可能性もあるだろう)

・それとも外観判定基準は以前と変わり無いものの、製造段階での各種基準が下がったためか?
(埃が混入しやすい環境になった、各部品の製造・管理の質の低下)

基準は以前と全く変わりない可能性
(偶然手元に2個の、そして知人に1個の埃の目立つプレサージュSARY136が届いただけ=3/8000=0.3%の希な確率を目の当たりにしただけであって、全体で見た「セイコー品質」はこれまでと全く変わりない可能性もある。)

・製造担当者が偶然もしくは意図的に埃の混入を招いた/サボタージュした可能性などもあるかもしれない。
(時計部の組み立て担当と梱包担当は異なるかもしれないが、間違った取説が入っているというのも怪しい。上司に恨みがあったからなんて節や、他の時計ブランドからの企業スパイによるサボタージュなんてのも無きにしも非ずだろう。)

原因が何であるにせよ、このような品質の製品が販売されるようでは、より知名度も歴史も経験も浅く、デザインも劣り、場合によっては「ただ金儲けのためにのみ腕時計を作り続ける」ようなブランドやマイクロブランドの、価格帯が安い腕時計と比べても格段に劣る品質であるのは大きな問題だろう。

プレサージュSARY136に限って特に品質が低いようにも思えるが、既に世界のセイコーファン達の間でセイコー品質の低下が認知されていることは、品質問題や判断基準の問題が徐々に大きくなりつつあることの表れかもしれない。

セイコーの腕時計は、人の心を掴むデザインでも、ムーブメントの正確さでも世に知られているほか、自社で全ての部品を一貫して製造できる世界でも数少ないマニュファクチュールブランドでもある。あとは文字盤の埃やムーブメントの傷と言った、セイコーと比べて非力な他の多くのブランドが難なくこなしている点さえ上手く出来さえすればよいのだ。

もちろんそれにはコストが掛かり製品価格へも反映されるかもしれないが(資金力のないブランドがそれを軽々しくこなしていることを考えるとセイコーにとってはそう大きなコストでもないだろうけど)、他社より劣る製品を出すという事実の方が結果的に利益の損失を招くのではないだろうか。

今回のようにセイコー側が送料を負担して現物の確認を行い、別の施設に送って処置してから送り返すのも(更にはメールのやりとりにも)、人件費と輸送費というコストがかかる。

販売店からしても、客から何度も交換を要請される商品を売るというのはセイコーの腕時計売り上げを阻害する要素となり得るだろう(今回の交換に要した送料も販売店が負担してくれているが、これも販売店には無視できないコストだ)。

更に今あなたがお読みのこの記事のように、公の場でセイコーの品質管理を問題視するファンが出てくるということは、より大きな損失と言える。しかもプレサージュ・カクテルタイムは広告をほとんど打つことなく口コミで世界中で人気が出たモデルであるというのは皮肉に思える。

もっと言えば、文字盤が売りのプレサージュ・カクテルタイムでこのような文字盤の問題があるのは悲劇としか言いようがない。写真をシェアする人の多いSNS時代にあって文字盤が売りのモデルにこのような汚点は致命的なネガティブプロモーションとなり得る。Instagramで#SeikoCocktailTime と検索して、それぞれの文字盤とインデックスを(特にマクロ写真の投稿で)よくよく見ていけば程なくして同様の欠点を持ったものを見つけることができるはずだ。(表面に付いたゴミとの見極めが難しい写真もあるが。)

更に言ってしまえばプレサージュ・カクテルタイムはデザイナーの活躍をわざわざby Seiko watch designで取り上げているモデルであり、わざわざムーブメントが見えるようにエキシビションバックになっているモデルであり、極めつけはこのモデルは限定版であるために通常モデルより2万円高価であるにもかかわらずこのような状態であるのは、セイコーのデザイナーにとってもこの時計を購入した人にとっても残念感倍増であろう。

幸いなことに私はカスタマーケアのしっかりした正規販売店(Francis and Gaye)で購入したので、当初の文字盤が汚いものから、文字盤に汚れが少ない品に交換をすることができた。2番目の物をセイコーに送らなければ、もう一度、今度は文字盤もムーブメントも綺麗であることを販売店が確認した物と交換することも可能だった。

なので事前に現物を確認して買うことのできないネット上で買い物する際には特にこのように皆さんにお勧めしたい:

購入するなら返品規定を確認してから正規販売店で購入しよう!そして、品質に問題が無いかよくよく確認して、絶対交換・返品しないでも満足と判ってから着用*しよう!(でも一番リスクが低いのは現物を確認して購入できる実店舗!)

*これは着用してからだと返品できないところがほとんどなため。

丁寧に詳しく回答してくださったセイコーCS推進部の担当者の方と、Francis & Gayeのカスタマーケア担当の方にはこの場をお借りしてお礼を言いたい。

今後もセイコーの腕時計を買い続けたいと思うが、買うときは必ず信頼できる正規販売店で買おうと思う(お店の人と知り合いになるのが一番良いかもしれない)。

そしてセイコーさん、頼むから品質を改善して、今後も世界に誇れる日本の腕時計としての地位を取り戻して欲しい。



(なおこのリンク先はセイコーの正規販売店とのこと。記事中で言及した店舗とは異なる。)


Source: Seiko
(abcxyz)

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