アラーム付き機械式腕時計は高級?ソ連製ヴィンテージなら1万円以下!第一モスクワ時計舎SIGNALをご紹介


時計に詳しい方なら、「アラーム機能が付いた機械式時計」と聞くだけで値段がうん十万するものを思い浮かべることだろう。

それがどうしても欲しい?でもそんな値段を払う余裕がない?

そんなあなたに耳寄りな情報だ。ヴィンテージで良ければ1万円以下でアラーム付き機械式腕時計を買うことができる。例えばご今回紹介するような第一モスクワ時計舎のシグナルのような…

まとめ

安価なアラーム付き機械式腕時計を探して

デジタルやクオーツ腕時計ならアラーム付きは安価。当ブログで取り上げただけでも、5000円でおつりが来る『ミッション・インポッシブル』カシオDW-290、6000円台のカシオ・データバンクDBC-611-1、中古だが僅か20ユーロで手に入れたアナデジPiratron P-5867とどれも1万円以下。

機械式であることにさえこだわらなければアナログ式(針で時間を示すタイプ)のクオーツでSKAGENの「Hagen World Time and Alarm Leather Watch」SKW6300というのは3万円で購入できる。(文字盤6時上のサブダイヤルがアラーム設定用のもの)

だが機械式に限定すると値段がぐんと10倍以上も上がる。有名どころだとバルカンのクリケットがあるが、新品だと70万円もする。

チュードルもアラーム付きのものを出しているが、これは50万円以上する。


じゃあ中古ならどうかと言えば、バルカンのクリケットでは中古でも10万円を下るものはなかなか見つけられない

バルカン=クリケット=アラーム機能つき機械式腕時計の代名詞、とも言えるブランド性もあるので値段が下がらないというのもあるかもしれない。

だがその他のブランドのヴィンテージ品を探してみれば、アラーム付き機械式腕時計は10万円以下で購入可能だ。

例えばeBayを覗いてみれば、セイコーのベルマティックならで2万円台、ブローバのWRIST ALARMは4,5万円台、シチズンのALARM DATEなら5~6万円台。 どれも「アラーム付き機械式腕時計」で名が知れるブランドでは無いものの、世界的にも有名なブランドだ。

だがブランドの知名度にさえこだわらなければ、アラーム付きなら1万円以下で購入することが可能なのだ。

出でよ第一モスクワ時計舎Сигнал!


ソ連「第一モスクワ時計舎」

eBayの記述によればこの腕時計は「1MWF (First Moscow Watch Factory) KIROVA」で作られたとされる。これはソ連/ロシアの腕時計ブランドとして有名なPoljotを作っているところでもある。元々は「Первый Государственный Часовой Завод - 1ГЧЗ」(英語だと「The First State Watch Factory」)USSR Watchによればスターリンの命を受けアメリカから腕時計製造機械を買い上げて1930年に設立されたもの。

1935年には社名が「кирова」(KIROVA)に改められる。これは1934年に暗殺されたソ連の政治家Sergei Kirov/セルゲイ・キーロフの名前から来ている(彼の名はロシアの地名などにも多く使われている)。

1941年にはモスクワからズラトウーストに場所を移すも1943年にはモスクワに戻り、「Первый Московский Часовой Завод - 1МЧЗ」(英語だと「First Moscow Watch Factory」、日本語だと「第一モスクワ時計舎」みたいな感じか)と名前を改めている。

「で、Poljotブランドになったのはいつ?」と思って調べてみたのだが、「Полёт/Poljot」というのは1MWFの作る時計のブランドの一つで、英語だと「flight」を意味する(なおWikipedia曰くPoljotブランドの誕生は1964年とのこと)。つまり「Poljot」の時計=「1MWF製のフライトウォッチ」というわけ。

今回購入したアラーム機能付きのものは「Сигнал」ブランドで(文字盤に表記されている)、ローマ字表記にすると「Signal」。このように機能によってブランド名が変えてあるということのようだ。が、Poljotブランドでアラーム機能付き腕時計が出ていたりもするので実際のところよくわからない。


ケース:アポロときのこの山を掛け合わせたようなダブル竜頭が可愛い


eBayセラーによればこの腕時計は50年代に作られたものだそう。ケース径は34mmと小ぶりなのも時代を感じさせる。ケース厚は風防含めて11mm。手巻き式なので薄いのも素敵だ。


2時と4時の二箇所から突き出た竜頭を別にすればケースは比較的シンプルな形状。

竜頭はどちらもアポロチョコと、きのこの山のチョコ部分を掛け合わせたかのような形。


なんとなくおわかり戴けただろうか…。


文字盤の周りには一段盛り上がった薄いベゼル部分がある。盛り上がったと言えばプラスチック製のボックス型風防の盛り上がりも美しい。


ラグ上面の外側の角は滑らかに削られ、ケース側面下部もそぎ落とされて美しい。


ケースの12時側のラグの間には「Au20m」、ゴールドで20ミクロンプレーティングがなされているとのこと。WatchPlating.comによれば腕時計の一般的なゴールドプレーティングは7~10ミクロンだとのこと。そう聞くと急に高級感が高まってきた気がする。


ケース裏はねじ込み式の留め具とアラームの鐘の役割も果たすスナップ式(?)の部品から成る。


ケース裏蓋に一部黒っぽいゴミが付いているように見えるが、この裏側にアラームとして機能させるための部品が付いている。


ケースはねじ込み式のリングを外すと、4つの出っ張りのあるケース裏蓋が。これを外すと(リングを裏蓋に引っかけて外すことができた)、裏蓋が外れる。


裏蓋の内側には金属の棒(ゴングとも)が突き出ている。これがムーブメントに付いているハンマーによって叩かれると、裏蓋と共鳴してアラーム音を鳴らすという訳だ。

ムーブメントは18石、18,000 bph、46時間パワーリザーブの手巻き式、「Poljot 2612」が使用されている。これはRanfft Watchesによれば1959年から1990年まで製造され続けた(息が長いね!)もの。A. Schild/アドルフシールド社(後にETAに合併)のAS 1475というムーブメントのコピーだそう。


ムーブメント上には「1МЧЗ」の刻印。


中に透明なパッキン/ガスケットのようなものも。eBayページには特段防水性能に関しては記述が無かったが、生活防水とかだったのだろうか?それとも裏蓋の鐘の振動がムーブメント側に伝わりにくいようにするための工夫だろうか?


文字盤:アラーム針にカーブされた時分針

12時にはローマ数字でXII、そのほかはシンプルなバー状インデックス。文字盤最外周には黒いドットが分刻みに位置し、インデックス内周には赤いドットが15分おきに記してある。針やインデックスもケース色と同様で統一感があり美しい。


文字盤そのものにも光沢がある。


「Сигнал」ロゴと、その下は「18камней」18石という意味。

針は時分秒針とアラーム設定針の4針。


秒針と分針は長く、時計最外周のドットに触れる程。

そして秒針と分針は先端がカーブさせてある上品な仕上げになっている。販売当時はどれくらいの値段だったのだろうか…。外周がカーブした文字盤、ドーム状風防とマッチして良い感じ。


アラーム針は先端が矢印上となっており、銅色に近い色が塗ってある。赤いドットに触れるほどの長さ。なお赤いアラーム用インデックスは12時のところだけ「|」になっている。


インデックスにはギリギリ当たりそうで当たらない。


6時下には「1 МЧЗ им кирова」(第一モスクワ時計舎)、「XXXXXXX X CCCP」(一部文字が消えて読み取れない…最後の部分は「ソビエト連邦」を意味するので多分「メイド・イン・ソ連」みたいなことを意味する文字だろう)。


アラーム:設定時刻7分前!ジリジリ元気良く鳴るよ!


アラームの鳴る様子は動画でご覧あれ。16秒と48秒でアラームが鳴り始めるので注意。

腕に着けたまま鳴っても、特に手首で振動が起きるから気付くわけでは無く、その音で気付く。音の面では携帯のバイブレーションよりも大きい音だ。

アラームを設定して竜頭を巻き上げておけば、設定時刻に10秒ほどジリジリとアラームが鳴る。時間設定はアラーム針を15分おきの位置にある赤い点に合わせることで行う。と言っても針をぴったり合わせても設定したはずの時間ピッタリに鳴るわけではなくて、数分前から早いときでは設定したはずの時間よりも7分前に鳴ってしまう。設定時刻より遅く鳴るよりは良いが。

アラーム竜頭を時計回りに回すと巻けて、反時計回りに回すと空回りする。竜頭を引き出して、反時計回りに回すとアラーム時刻を設定できる(時計回りは空回りする)。このためアラーム針はアラーム設定時に時間を逆行していく方向にしか動かない。

やはり裏蓋を外した状態でアラームを鳴らすと音は小さい。

アラームが鳴った後はハンマーが自由に動ける状態になってしまい、時計を揺らせばハンマーがゴングにぶつかる音が聞こえるし、そのままの状態でアラーム竜頭を巻き上げようとするとジリジリと音を出す。アラームが鳴ってから30分程すると竜頭を巻くことができるようになり、ハンマーのぶつかる音もしなくなった。


まとめ:買って良かった、お手頃、楽しい


(写真の18mmストラップはsay time watchによるコルク製のもの。)

小ぶりなケースサイズと、風防込みで11mmの厚さも着け心地がよいし、何しろ軽い。

こんな小さくて軽い中に機械式の時計とアラームが入っているなんて驚きだ。

しかもまさかアラーム付き機械式腕時計が1万円以下で手に入れられるとは思ってもみなかっただけに嬉しさ倍増。

アラームは目覚ましとしても使えるし、予定のある時間を知らせるために使ったり、薬を飲む時間を知らせるなど何かと便利だ。購入する前は、一度アラームが鳴ったら次回鳴らすときに巻き直さなければいけないというのが面倒くさそうだと思っていたが、実際に使ってみると苦にならないし、なによりも巻き上げるという行為そのものが予定を自分にリマインドする役割となる。


このようなアラーム付き機械式腕時計を買いたいという方は、eBayで「POLJOT alarm」、「1MWF signal」、「Poljot 2612」などと検索すれば今も1万円以下の出品が数多く出ている。

前述したように90年代まで作られ続けていたムーブメントなので、デザインのバリエーションも豊富に見つかるはずだ。

一般的に製造年が新しいものの方が経年劣化が少なくて安心感があるのではとも思うが、ただ単に製造年が新しい時計を買うよりは、説明に「Serviced」(整備済み)とあるものの方が安心だろう。



(abcxyz)

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