セイコー・キネティックのご先祖様、AGSを分解してキャパシタ交換!


 前回記事「eBayでセイコー・キネティックのご先祖様を買ってみた。セイコーAGS、7M22-6A00レビュー」から4ヶ月も経ってしまったが、キャパシタを交換した記事を載せる。

タイトル通り、セイコー・キネティックのご先祖様にあたる、セイコーAGSを分解して、劣化してほぼ機能しなくなったキャパシタを新しいものと交換する内容の記事だ。交換したのは実際には今年2月頃なのだが、それ以降数日腕に付けた程度なのに、4ヶ月経った今もバッテリーが切れること無く動き続いている(これには驚いた)。

何かの参考になれば嬉しいし、さほど難しい作業ではないので挑戦されるのも良いかもしれないが、くれぐれも自己責任で。自信の無い方は時計屋さんと相談してみると良いだろう。

もくじ

交換用キャパシタの型番は?
いざ分解!
いざ、キャパシタ交換!
バッテリー交換で中古AGSを楽しもう!?
現行キネティックも要チェック!


交換用キャパシタの型番は?

まずは交換用に用いるキャパシタを調べるところから。

基本的にムーブメント名と「バッテリー交換」に当たる言葉を入れて検索すれば出てくるだろうとおもったので「7m22 seiko replacement battery」などと検索。すると互換性があるとして出てきたのはSeiko 3023-24Rというバッテリー。安かったので今回はAliexpressのここで注文した。だがAliexpressは商品到着まで時間が掛かったりするので、待ちきれない人はどこか他で注文すると良いだろう。

Amazonでは見つからなかったが、楽天では取り扱っている店がある。



いざ分解!



落ち着いた声で安心感のあるWatch Repair Channelで7M22ムーブメントのキャパシタ交換動画が公開されていたのでこれを参考に分解開始。


裏蓋風防には赤みがかった色が掛かっている。写真は裏蓋の裏側。


そのためエキシビジョンバックを通して見るムーブメントの色合いも赤みがかっていたが、外してみるとこの通り、ケースの他の部分と色合いがマッチする。


コイルと水晶振動子。


「SEIKO」の刻印のある美しいローター。


おや、ローターのネジを見ると、既に誰かが開けようとしてネジ穴を傷つけた形跡が。径の合うドライバーが見つからずに失敗したのだろうかと推測。


少し錆びたような跡も。


こちらが問題のキャパシタ。

いざ、キャパシタ交換!



ローターを外したところ。結構しっかりネジが締めてあった。


動画ではローターを取り外した後、ローターの下にあるギアも外しているが、私のものにはその行程は必要なかった。


この状態からキャパシターの上を覆う金色の板(次の写真に写っている)を外すのが難しかった。この部分はマイナスネジふたつで留めてあるのだが、これらのネジが小さいのだ。



残念ながらこのサイズのネジを回すことのできるドライバーは持っていないので、愛用のビクトリノックス・シグネチャー(のフィンランド限定?レイヨナ印のもの)のナイフ部を使って回す。


取り出したらこんな感じ。


最初に入っていたキャパシタは「GC 920」、「2.4V0.33F」、「JAPAN」と書かれている。


接続部側には「19」。


Aliexpressで注文した新しい方のSeiko 3023-24RはパッケージにちゃんとSEIKOと書いてあった。安心。


「てくだ」、「みくだ」!キャパシタの接続部を保護する部分には日本語が。


接続部を破損させないよう気をつけて開封。


比較してみると、新しい3023-24Rの方がマイナス側の径(中の丸)がより大きくなっているのが判る。

最初取り付けた時には、いくら振っても針が2秒置きにしか動いてくれず、どうしたものかともう一度裏蓋を開ける。先の動画でも同様に取り付け後に動いてくれず、動画後半からはチャージング用ローターのピボットが壊れており、この部分の交換が必要となっていた。

そんなことでなければ良いがと願いながら先ほど取り付けたネジをもう一度締め直す。

すると無事に動き出した!


この腕時計そのものの感想は冒頭でもご紹介したこちらの記事でお読み戴ける:「eBayでセイコー・キネティックのご先祖様を買ってみた。セイコーAGS、7M22-6A00レビュー」

同じく冒頭に記したが、今年2月頃交換して以降、数日着用した程度なのに、4ヶ月経った今もバッテリーが切れること無く動き続いているのは驚きだ。それだけバッテリーの性能が上がったと言うことか。なお、AGS後続のキネティックにはパワーリザーブ/バッテリー残量表示用のプッシュボタンが搭載されているが、AGSにはそのようなものはない。バッテリー残量が低くなると秒針が2秒毎に動くことでこれを示す仕組みだ。


バッテリー交換で中古AGSを楽しもう!?


ジャンクとして販売されている物の中にもキャパシタを変えたら動くというものもあるかもしれないし、もし直して販売できたら金になるだろうな・・・なんて夢見たり。そんな夢をお持ちの方はeBayで探せばもしかしたらきちんと動くけどキャパシタ交換が必要という品を見つけることができるかもしれない。意外と家族親戚、近所の人とかに聞いたら箪笥の中に眠っているのを譲ってくれたりするかもしれないけど。

自分でキャパシタ交換してみようという方の中には英語の動画と言葉足らずな私の説明では不安な方もおられるだろう。でもご心配なく。どうやらAGS/キネティックのキャパシタ交換は多くの人がやっているようで、日本語でもGoogleで「セイコーAGSキャパシタ交換」などと検索すればキャパシタ交換を詳しく説明しているウェブサイトも多く出てくるはずだ。ただ、自分で行うと防水性能が保てているかどうか自信が無くなるけど。

セイコー・キネティックの先祖としてのセイコーAGSを愉しもうという方は楽天で時折中古のものが出品されているのでそれらにも目をつけておくと良いかもしれない。





現行キネティックも要チェック!


もちろん、現行のキネティックモデルだって面白いものが沢山出ている。



レトログレード(針が回転するのではなく、針が2方向に動く)で曜日表示するSRNシリーズはお手頃だし、ドレッシーな感じ。



ミリタリー/フィールドウォッチ・スタイルのSKA727。



ビッグデイトにパーペチュアルカレンダー付き、閏年からの経過年も表示することのできるSNP098やSNP149。



プロスペックスラインからは、GMTに回転ベゼルのダイバースタイルのSUNシリーズ。



プロスペックスの中ではPADI(世界最大のスキューバダイビング教育機関)のロゴも入った、青いアクセントカラーのツナ缶スタイル、SUN065P1なんてのもある。

そもそもどのみち10年程度しかキャパシタが持たないのであればカシオの10年電池モデルでもいいという人もおられるだろう。確かにその方が無駄にローターなどの機械部がない分故障が少ないだろう(先の動画後半のような部品交換が必要だった)



デジタルは当然ながら・・・



アナログも・・・



アナデジまである!これらのカシオはどれも電池寿命10年をアピールするモデルだ(怪しいと思われたらカシオのウェブサイトで確認されたし)。


「じゃあカシオの10年クオーツ腕時計で実用十分、事足りる」と思われる方も大勢おられることだろう(上のリンクは全てカシオの10年クオーツ)。実用性を考えるとそれはもっともだ。だがAGS/キネティックは「自分の動きが時計を動かしている」という自動巻き腕時計の愉しさと、クオーツ時計の正確性の両方を備えているという点で、それでも10年に一度キャパシタを交換して使い続ける意味のある腕時計シリーズだろう。

Source: エプソン, セイコー, カシオ

(abcxyz)

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