UNDONE最新コレクション、トロピカル・ダイヤル風ヴィンテージウォッチ「Tropical」提供レビュー


UNDONE Watchesより、この度発表された同社の最新コレクション「Tropical」から「Tropical Sahara」モデルの腕時計を頂きレビューする機会を頂いた。

UNDONE社は以前も「Urban」モデルをレビューさせていただいている香港のカスタムウォッチメーカーで、日本での販売はUNDONEジャパンが行っている。UNDONEジャパンはただ日本でUNDONE社の製品を扱うだけではなく、日本の著名人とコラボしたり、最近京急120周年を記念した限定モデルや、早稲田大学公認オリジナルダイバーウォッチなど魅力的なコラボ展開をしている。これにはきっと海外のUNDONEファンもうらやましく思っていることだろう。(早稲田卒で大の電車好きだったうちの亡くなったおじいちゃんが生きてたらこれらのコラボモデルがいいプレゼントになったろうな~)

さて、今回提供戴いたUNDONE最新モデルをご紹介する前に、このコレクションの名前「Tropical」の由来ともなった「トロピカル・ダイヤル」について少し書かせて戴こう。



トロピカル・ダイヤル



image courtesy of UNDONE

「トロピカル・ダイアル」をご存じだろうか?…それはオメガやロレックスなどの限られた時計に見られるとてもレアなダイアルだ。それもそのはず、トロピカル・ダイアルは意図して作られたものではないのだから。


image courtesy of UNDONE

Dan Henry Watchesによれば、トロピカル・ダイアルは50年代半ばから60年代後期にかけてダイヤルに使用された保護コーティングが、あろうことかダイヤルを保護する代わりに酸化してダイヤル表面と反応して色を変えてしまったものを指す。変色したダイヤルは色が少し落ちたようなものからミルクチョコレート色まで様々で、中にはダークブルーのダイアルがゴールデンカラーに変色した例もある。偶然の変色であるため、色も様々であればその色の出方も千差万別で、全体の色が均等に変わっているものや、ポツポツとした模様状に変色しているものもある。文字盤は水がケース内に入ることでも変色するが、トロピカル・ダイヤルはそれとは区別される。


image courtesy of UNDONE

変色、と言えば聞こえが悪いかもしれない。しかしDan Henryで挙げられている例だけ見ても、トロピカル・ダイヤルとなったオメガ・スピードマスター・プロフェッショナルがそうでないものと比べ330%のプレミア価格がついたとか、トロピカル・ダイヤルのロレックスデイトナRef.6263ポール・ニューマン・ダイアルは150万スイス・フラン(約1億6900万円)の予想最大価格を大きく上回る、198.5万スイス・フラン(約2億2300万円)で落札された…。つまりトロピカル・ダイヤルとなった時計はそれだけ希少価値があり、時計ファンからは羨望の眼差しで見つめられるものなのだ。


Tropical Collection



image courtesy of UNDONE

さて、そんなトロピカル・ダイヤルにインスパイアされたUNDONEのコレクション「Tropical」。基本となるモデルは色の濃い順番から「Tropical Amazon」(写真左)、「Tropical Caribbean」(写真右)、そして今回レビューする「Tropical Sahara」(中央)の3種類だ。

一番の特徴はやはりトロピカル・ダイヤルを再現したそのダイアル。UNDONEによれば同社は本物のトロピカル・ダイヤルを持つ時計を詳しく研究し、これをプリントで細かく再現したという。筆者は本物のトロピカル・ダイヤルは残念ながら見たことが無いので比較することはできないが、ダイアルは経年変化により柔らかく色あせたような色合いを上手く再現している。(なおTropical Amazonはダイアルが「酸化し色あせる前の色」を表したものとなっており、トロピカル・ダイヤル風にはなっていない。)


Tropical Sahara



ではTropical Saharaを見てみよう。全体的な出で立ちはこれまでのUndoneのどのコレクションとも異なる雰囲気だ。


肝心のトロピカルダイアルは、よく見てみると均一色のダイアルでは無く、どことなく迷彩柄にも似たランダムな模様で濃淡がつけられており、ぱっと見本当に経年変化のようだ。


(写真は虫眼鏡で拡大しているため虹状の光が写っているほか、撮影に用いたBlackberry KeyOneのカメラを縁取るの銀色の円もうつりこんでいる)また、文字盤から1段デボス加工で下げられたサブダイヤル部分は微妙に色が変えられているのも芸が細かい。


もう一つの特徴は、ベゼルだ。ベゼルはタキメターが刻印されたタキメーターベゼルとなっている(タキメターがどんなものなのかはUNDONEのUrbanモデルのレビュー記事が詳しい)。このタキメター刻印のダイアルによりUrbanよりも少し無骨な、しかし同社のダイバーウォッチであるAqua程のどっしりした感じでも無く、程よい力強さを醸し出しており、クラシカルなオメガのスピードマスターを彷彿とさせる。

野暮な例えかもしれないが、ある意味では、Tropicalはショーン・コネリー版ボンドで、Aquaはダニエル・クレイグ版ボンド、みたいな。Aquaみたいな筋肉むっちり感は無いものの、Tropicalは程よく筋肉と大人らしい洗練感を持った感じ。


ケースバックはこの「ソリッドケースバック」版の他、内部のムーブメントが見えるガラス版もある。ガラス版には図柄をプリントすることも可能となっている。

他の部分も見ていこう。使用ムーブメントはSII(セイコー)の「VK61」。これはUNDONE社のUrbanモデルにも使われている「メカ・クオーツ ハイブリッド」と呼ばれるもので、時刻や日付の表示にはクオーツを用いているが、クロノグラフ部分はメカニカルなモジュールで機能するというもの。


ドーム型の風防はK1強化ガラス。文字盤には通常の時分針と共に、一番長く細いクロノグラフ用の秒針、サブダイヤルは24時間表示の時針が右側に、左側にはクロノグラフ用の分針、そして6時方向には日付を示す窓がある。インデックスと時分芯は蓄光する。欲を言えば日付表示も真っ白では無く少し色あせていると統一感があっただろうかとも思うが、先に掲載しているロレックス GMT マスターの写真を見ると日付表示は白いままなので、ある意味ではトロピカル・ダイヤルの再現としてはこれが正しいのかもしれない。


ケースは316Lステンレス・スチール。3ATM、30メートル防水。竜頭にはおなじみのブランドロゴ「U」が入っている。


ストラップ幅は20mm。標準のストラップはレーシンググローブのように穴が開けられたもので、留め具にはUのロゴ入り。汗っかきやトロピカルな環境にはぴったりだ。


もちろんこれらのストラップもクイックリリースがついているので簡単に他のストラップと変えて雰囲気を変えることが可能だ。


ケース幅は41.8mmと、Urbanの40mmよりも僅かに大きい。しかし同じくドーム型の風防を持つUrbanモデルよりも実は薄くなっており、Urbanの13mmに対しTropicalは8mmだ。


まとめ



TropicalコレクションもUrbanラインと同様にカスタマイズ可能となっている。自在なカスタマイズが特徴であるUndone社のラインナップに、時計本体の形状が従来のUrbanとAqua以外の第三の選択肢が登場したという点でも今回のTropicalコレクションの登場は大きい意味を持つだろう。


トロピカル・ダイヤル風のダイアルは、もちろん「ヴィンテージ風」というファッションを許容しないアンティーク一筋の人には否定される存在であろう。しかし「本物」のトロピカル・ダイヤルはその希少性と高価なことから「偽物トロピカル・ダイヤル」、すなわち、本物と偽った再現ダイアルも存在する。そんな中にあってUndoneは非常にレアな存在であるトロピカル・ダイヤルを「ヴィンテージ風加工」と同系列のファッションパターンに落とし込んだと言えよう。ここには嘘偽りは無く、あるのはファッションパターンという新たな形に昇華されたトロピカル・ダイアルなのだ。


この場をお借りして、今回レビューする機会を与えてくれたUNDONEに感謝したい。

[via Undone]

(abcxyz)

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