人道的で環境に配慮したアクセサリーを世に送り出す。ドイツsay time watchより「Bracelet」提供レビュー


先日、人と環境にフェアなドイツのsay time watchによるプロジェクトをご紹介した。今回はそのsay time watchのご厚意により現在実施中のKickstarterキャンペーンでリワードとして提供されているブレスレット「Bracelet」を戴いたのでレビューさせて戴く。



開封



細長い黒の木箱に入ってやってきたBracelet。


ぱっと見どこが開け口かわからないほどピッタリと蓋が合わさっている。蓋部分はスライドさせれば外れる。


中には木くずが敷き詰められ、顔を近づければほのかに優しい木の香りが。そして木々に柔らかく包まれているのがBraceletだ。


Bracelet



伝統的な職人技とデザインを掛け合わせ、現代社会にサステナブルな方法で造り出すというのがsay time watchが目指すところ。そしてブランド名にも現れているようにサステナブルな時計というのは同社の目標である。このBraceletはあくまでも腕時計では無くブレスレットではあるが、その要素は腕時計を彷彿とさせる。


まずは腕時計で言うとケースに当たる部分からレビューしていこう。真っ先に目に付くのは特徴的なテクスチャーであろう。これは「イカの骨」(カトルボーン)の持つテクスチャーが現れたものだ。say time watchのBraceletはイカの骨を削り造りだした原型を用い鋳造されている。詳しくは前回の記事を参照されたい。


このテクスチャーは当然ながら表面と裏面で異なる。片面は「荒い」テクスチャーで、もう一方の面は「細かい」テクスチャーとなっている。今回は表面のテクスチャーが「荒い」ものを選択したため、裏面はより詳細なテクスチャーとなっている。


厚さは2mm強、3mm以下であるが、側面にもちゃんとテクスチャーが見えるのはすごい。

このケース部分の素材は、フェアトレードされた925スターリングシルバーでできているものだ。この点に関しても詳しくは前回の記事に記しているが、フェアトレードされた貴金属は、人道的にも、環境的にも重要なものだ。我々の知らないところで使用されている、フェアにトレードされていない貴金属は、非人道的な労働環境、児童労働だけでなく、紛争を引き起こすなど数多くの問題を抱えている。


黒っぽいのはシルバーの表面が硫化されたものであるため(便宜上これは「酸化」と呼ばれ、前回の記事でも私はこれを酸化と書いたが、実際には硫化されたもののよう。ただやはり通常この状態の銀は日本語でも英語でも酸化銀/oxidized silverと呼ばれるようだ)。

いぶし銀/酸化銀などとも呼ばれるこの加工は、硫化水素などを用い硫化反応が起こることで銀表面が硫化銀となり黒ずむもの。一度表面を硫化させた後に、その層を磨き取ることでアクセサリーの持つ凹凸を際立たせ、より細かく立体表現を見せるために使われることが多い。


しかしここではいぶし銀加工のみがなされている。黒い層は薄いため、次第にこの黒い層は薄れていくとsay time watchの金細工職人Selina Yanik氏は語る。時間経過と共に徐々に黒い層が削れるというのは、レザーで言うところのエイジングのような、着用者と共に成長する製品という愉しさがあるだろう(エイジングというのも面白い言葉で、これはカタカナ語を用いることにより元の意味があやふやになっている感があるが、所謂経年変化だ)。或いはまるで時間の流れに徐々に岩が削られていくような感覚とも言えるかもしれない。

レザー素材を用いた製品の他、オーディオ業界ではエージングが製品にまつわる要素の一つとなっているようだ。しかし、そのような一部の分野を除けば、このような経年変化に見られる美は、均一的で画一的な製品を良しとする大量生産・大量消費の時代に見落とされがちな価値観だ。そしてこれは日本の「わび・さび」に通じるところがあるだろう。


ストラップはポルトガルのThe Museu do Relógioによるハンドメイド品。コルク独特の優しい手触りと柔軟性は心地よく、レザーその他のストラップ素材と比べてもなんら劣るところはない。


ストラップ幅は18mm。裏面には「say time watch」のロゴが刻印されている。コルクの柔軟性に関しては特に捻り方向に柔軟な点が一般的なレザーストラップと異なるだろう。


バックルとバックルピンは非常に小さな部品ではあるが、この部分にもやはりイカの骨のテクスチャーが見て取れるようになっている。この部分もケース部分と同じくフェアトレードされた925スターリングシルバーのいぶし銀仕上げとなっている。


私の腕には一番小さな穴でギリギリ合う感じ。より細い手首の方であればもう一つかふたつ穴を開けないといけないだろう。


まとめ



ブレスレットとしてのこの製品は、自然の素材と形を使った美しさがある。そして、ここには自然を身につける、フェアトレードされた素材を身につける、サステナブルファッションを身につける、というファッションステートメントだけに終らない多様性のある楽しみ方があるだろう。

個人的にはこれが時計に似た形状を持つことが様々な楽しみ方を生み出していると思う。

時計の着用が求められる場でこれをつけることで、その表面的なルールへの反抗心を示すこともできるし、腕時計をつけているように見せて時計ではないということが時間を気にしないというアピールにもなる。前回の記事でも記したが、時計ファンにとってはレトロな長方形/レクタンギュラー型のケースをしたジャガー・ルクルトのReversoのような腕時計を彷彿とさせるその形状を楽しむこともできるだろう。


そして何よりも会話を生む要素として重要である。私はこのブレスレットから生まれる会話から、「貴金属のフェアトレード」という未だ周知されているとは言いがたい話題を多くの人に知らしめることができたらと思う。

このブレスレットの一般販売価格は320ユーロ(現在の日本円で約4万円)。この価格はもちろんフェアな素材、エコな素材を用い造り上げられた製品として意味のある価格だ。



従来のラグジュアリーファッションは、価格に見合った技術や品質の高さがあった。しかしここ数十年のラグジュアリーファッションは製品の質では無くブランド性とマーケティングにより価格をつり上げてきたという記事が最近Fashionbeansに掲載されていた。品質の伴わない空虚なブランド名にお金を山のように費やす人は別として、この状況を快く思わない人は多いだろう。

このような中で、say time watchの生み出す製品のように、人間環境、地球環境に気を配り、手作りの職人技で製品を作り、このように意味のある価値に金額を払うという選択肢が増えることは望ましいことだ。そしてそれとと共にこのような、人にとっても環境にとってもフェアな、サステナブルな未来を形作る製品に金銭的な価値が見いだされる時代が来ることを期待したい。


say time watchの行うKickstarterキャンペーンは現在目標金額の20%を集めている。今回レビューしたBraceletの他にも、腕時計であるType One(これに関しても前回の記事で詳しく述べているのでご確認あれ)、そしてエッチング版画もリワードとして用意されている。彼らの理想に共感する方はKickstarterキャンペーンもチェックしていただくといいだろう。




Source: Kickstarter, キリヤ科学

(abcxyz)

コメント

William Henry さんの投稿…
Thank you so much for barbie 2023 ryan jacket sharing such a great and knowledgeable blog. Thanks!